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第十六話 【癒えない傷】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
ある日の朝、顔を伏せ、たどたどしい足取りながらも、必死に学校へ向かうあかりの姿があった。
あれから結局、数日間は学校を欠席してしまった。
あかりは、今まで病気が長引くといったこともなかったため、母は不審に思っているようだったが、あかりが辛そうに寝込んでいる姿に、あまり深く追求はしてこなかった。

あかりの頭の中では、様々な思いがぐるぐると回っていた。
日々の凄惨ないじめ。山田によるレイプ未遂。そして、あまりにも意外な、山田をけしかけたかと思われる人物・・・。
あかりは、もはや、自分ではどうすれば良いのか、全く分からなかった。
死にたい。ただただそれだけを思って、ベットの中に引きこもって過ごした。
だが、それでも、あかりはまだ、強い自分を完全に失ってはいなかった。
一度、学校に行って、高橋と接して、様子を見てみよう。数日間で、あかりはそこまで精神状態を回復させることが出来たかのように見えた。
それは大間違いだったと気がついたのは、すぐのことだったのだが。

いつものように、何か言われたり、されたりしないか、おびえながら学校へ向かう。
生徒たちは、相変わらず、あかりのことを見つけると、それぞれの形でいじめを行ってきた。
あかりは、生徒たちのその態度を見て、もはや抵抗する勇気は起きず、一つ一つのことにダメージを受けてしまった。
それでも、休む前に比べて、いじめの内容は、それほど悪化はしていなかった。ということは、山田が先日の画像を送りつけたりはしていないということなので、それに関しては、ほっとした。
しかし、問題は山田本人である。あかりのことを見たら、一体何を言ってくるか分かったものではない。
ましてや、教室に、例の画像が貼りつけられてしまっていたら・・・。

おそるおそる教室に入ると、今最も顔を合わせたくない人物、山田が、相変わらず気持ち悪い、ニタニタとした表情を浮かべて、うろうろとしていた。
あかりは、山田の姿を見るだけで、ここから逃げ出してしまいたい気持ちにとらわれた。
一通目のメールのあとも『学校、早くこいや』『また、いじめてやるからな』などと、山田からのメールは続いていた。
そのために、すぐにまたアドレスを変えたのだが、山田に対する恐怖心は深まる一方だった。

「ヤリマン~、なんで学校来なかったのぉ~?サボり?それとも、アノ日だったとか?」あかりに気がつくと、すぐに山田が近づいてきて、あかりをはやし立てる。
あかりは、吐き気がこみ上げてきた。山田にされた行為が、改めて脳裏に浮かぶ。
「この間の画像、待ち受けにした?」あかりをいやらしい眼で見ながら、こっそりと山田が言った。
あかりは、山田に殺意を覚えた。そうだ、こんな奴のために自分が死んでしまうぐらいなら、いっそのこと、こいつのことを殺してしまおうか。

あかりは、何かにとりつかれたかのように、自分のロッカーの中の彫刻刃を取り出した。
再度、山田の方へと近づくと、あかりは、それを振りかざし、能面のような表情で、山田を切りつけようとした。

「あかり、やめろ!!」その大声で、あかりは我に返った。
気がつくと、クラス中の生徒が、何事かとあかりのことを見ていた。
山田は、これ幸いにと、うわわっ、という情けない声を出しながら、教室の外へと逃げ出した。
「何やってんだよ、ったく」そう言いながら、放心状態のあかりから、大声を出した人物が、彫刻刃を奪い取る。それは、楓だった。
「楓ちゃん・・・?」あかりがぼんやりと言うと「別に、てめぇのこと許したわけじゃねぇから」そう言って、勝手に照れながら自分の席に戻る。

「何があった!!」今度は、鈴木が怒鳴りながら勢い良く教室に入ってきた。誰かが、鈴木のことを呼んだらしい。
その問いかけに、誰も答えることがなかった。当然だが、あかりも何も言わなかった。
「おい、誰か答えろ!!」鈴木が更に生徒たちのことを怒鳴りつけるが、お互いに顔を見合わせるだけで、一向に誰も口を割ろうとはしない。
「大川が、突然暴れ出したということで良いんだな?」そう言って、鈴木は、近くにいた生徒のことを、威圧的に睨む。
それに押されたのか、こくり、とその生徒は頷いた。
鈴木は、真っ青になると「大川、放課後、事情を説明しろ」それだけ言って、また大慌てで教室を後にした。

その日、あかりはほとんどの時間を汚い方のトイレの中で過ごした。
休み時間はもちろんのこと、授業の時間でさえも、である。それを、誰も呼びに来ることはなかった。
楓が止めてくれたから良かったものの、あのままだったら、あかりは、山田のことを本当に殺してしまっていただろう。
それだけ、自分が心に傷をおってしまっているということに、あかりは深い悲しみを覚えた。
ましてや、他人のことを本気で殺そうとするなんて・・・自分の中にあった残虐性も、あかりには許すことが出来なかった。
あかりは、服が汚れてしまうのも構わず、個室の中に座りこんで、ずっとずっと泣いていた。

それでも、いつかは学校から帰らないといけない。
あかりは、重すぎる腰を無理矢理上げると、教室へと向かった。
もう既に放課後になっているようで、教室内には、誰もいなかった。
そのことにほっとしながら、あかりは帰り支度を始める。

そこへ、鈴木がやってきた。「今日一日、一体何をやっていたんだ」あからさまに不機嫌そうに、あかりに聞く。
「・・・」あかりは、鈴木のことを無視した。もはや、鈴木とは何も話したくなかった。
「お前、俺のことをおちょくってるのか!!」そう言って切れ出すと、鈴木は、強引にあかりの腕を引っ張った。
鈴木のその行動に、あかりは、嫌でも山田から受けたレイプ未遂のことを思い出さされた。

「いやあああああああああああ」パニックになったあかりは、無理矢理鈴木の手を引き剥がすと、教室の窓に突進し、飛び降りようとした。
「おい、何やってるんだ!!」鈴木が慌てて近づいてくるが、そのことに、あかりは余計に恐怖心をあおられた。
近くにあった椅子を鈴木に向かって投げ飛ばし、窓枠に手をかける。

そのまま、あかりの体は、宙に舞った。
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編集 / 2012.06.09 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十五話 【疑惑】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
「そうなんだぁ、最後までヤれなかったんだぁ」山田は、あかりの家を後にすると、すぐに自分の好きな女に電話をかけた。
「邪魔が入っちゃったから・・・でも、画像と動画は撮ったから、送っておくよ」残念そうな声を出す女に対し、媚びるように、山田は言う。
「良くやったね。えらぁい」女は、そう言ってから、一瞬間を置くと「あの女、苦しんでた?」と山田に聞く。
「スゲーびびってたよ。やっぱり、ヤリマンでも、レイプは怖いんだな」山田のその答えに、女は心から満足そうに「ふふ、それなら良かったぁ」と言った。

手首を切ったあと、あかりはすぐに正気を取り戻して、カッターを床に置いた。痛みはそれほど感じなかった。
しかし、かなり出血して、腕は血まみれになり、床にまで血が広がってしまっていた。
自分でも驚くほど冷静に、あかりは行動した。まずは腕を洗い、切った箇所に絆創膏を貼る。
それでもみるみるうちに血はまた溢れてきたので、重ね貼りをした。
次は、床の血が固まってしまう前に拭かないと、と思い、タオルと新聞紙で、床を綺麗にした。
床に転がっているカッターを見ていると、また手首を切りそうになってしまったので、あかりはそれを自分の部屋の押入れに放りこんだ。

一通りの処理を済ませると、血のついた服を脱ぎ捨て、あかりは風呂に入って、必死に体を洗った。
特に、山田に触られ、舐められてしまった胸を、赤くなって傷ついてしまうほどに。
それでも、あのおぞましい感触は、決して消えることがなかった。
あかりは、自分は汚れてしまった、と思った。
もう、二度と涙は出ないのではないか、というぐらいに泣いた。シャワーがそれを、洗い流してくれた。

次の日、あかりは、ベットから出ることが出来なかった。
いや、そればかりか、体を動かすことさえも、満足に出来ない。
昨日のことが夢であれば良かったのに、と思ったが、記憶は、はっきりと残ってしまっていた。
「どうしたの?もう、学校に行く支度をしないと。まだ、熱が下がってないの?」心配した様子で、母が部屋に入ってくる。
あかりは、咄嗟に手首を隠して「うん・・・まだ、調子悪いみたい」と言った。
「顔色が凄く悪いものね。また学校に連絡を入れておくけど、今日で治すこと。それじゃあ、お母さんは、仕事に行ってくるから」そう言って出ていこうとする母に対して、あかりはおもわず、待って!と叫びたくなった。
外へは、出たくない。だけど、家に一人でいることは、もっと怖かった。
それでも、助けを求める声は、出てこなかった。あかりは、またも一人で家で過ごすことになった。

その日の学校では、相変わらず、サンコイチが一緒に話をしていた。
「ヤリマンの奴、とうとう登校拒否になりやがったな。つまんねぇの」楓が言うと、玲奈も「いじめる相手がいなくて、玲奈、つまんなぁい!」と言った。
しかし、ミサだけは、複雑な表情を浮かべて、黙っていた。
「ミサちゃん、どぉしたの?ヤリマンのことが恋しいのぉ?」笑いながら玲奈が聞いても、ミサは黙ったままだった。
「おい、ミサ、どうしたんだよ。まさか、ほんとにヤリマンのことが・・・」「違う!」楓の発言に、ミサは突然、大声を出した。
二人があっけにとられていると、ミサは「ごめん、今、生理前でイライラしてるんだ」と言って、教室から出て、どこかへ行ってしまった。
「なんなんだ、あいつ?」楓が首をかしげると、玲奈が「ヤリマンのコト、一番いじめてたのはミサちゃんなのにねぇ。玲奈、意味わかんなぁい」と、少し苛立った様子で言った。

そのとき、山田が玲奈に近づいて「これ」と言って、携帯の画面を見せてきた。
「ちょっと、近づかないでよぉ」そう言いながらも、玲奈は画面を覗きこむ。
「うっわ、マジキモい」画面を見た玲奈が、吐く真似をしながら言った。
それは例の、あかりを襲ったときの画像だった。
「なんだよ、アタシにも見せろよ」そう言って、楓は山田から携帯を奪い取ると、自分も画面を見た。
「ねっ、超キモくない?」玲奈が、楓に意見を求める。「キモすぎだな」楓はそう言って、すぐに山田に携帯を返した。
山田は、いつものようにニタニタとしているだけで、何も言わなかった。
「山田ぁ、この画像、どこで手に入れたのぉ?」玲奈が聞くと「俺、ヤリマンとセフレなんだ。動画もあるよ」言うが早いが、山田は、今度は動画を再生して、二人に携帯を見せる。
山田に胸を弄ばれ、本気で嫌そうな表情を浮かべているあかりの姿を見て「いや、これ、レイプだろ」と、楓にしては珍しく、難しい顔をしながら言う。
「いくらあいつがヤリマンだからって、ほんとにレイプしちゃダメでしょ・・・」玲奈も、珍しく冷静な意見を述べる。
「最後まではヤれてないから、今度こそは最後までヤってやるんだ」またもニタニタしながら、山田が言った。
その山田の発言に、さすがの二人も顔を見合わせて、言葉が出てこなかった。

あまりにも酷い現実から逃れるように、あかりが死んだように眠っていると”ファイト!”の着信音で、目を覚めさせられた。
「誰・・・」のろのろとした動きで、あかりが携帯を見ると、それは、知らないアドレスからのメールだった。
『昨日の画像と動画、送っておいてやるよ待ち受けにでもしておきな』そのメールには、実際に昨日のレイプ未遂のときの画像と動画が添付されていた。
明らかに、送り主は山田だった。またもパニック状態になりそうな自分を必死に落ち着かせながら、あかりは、なぜ山田からメールが送られてきたのかを考えた。
あかりは当然、山田には自分のアドレスを教えてなどいなかったのだ。
ということは、誰かが山田に、自分のアドレスを教えたことになる。
そうすると、出会い系の件があってアドレスを変えたばかりだから、それは、今のアドレスを知っている人間に限られる。
しかし、学校の中に、新しいアドレスを教えた相手など、いただろうか。
あかりは、更に考えを進ませると、とんでもない、恐ろしい事実に気がついてしまった。

そう、あかりの新しいアドレスを知っているのは、高橋だけだったのだ。
編集 / 2012.06.08 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十四話 【死にたい】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
いじめが過熱していく中、それでもあかりは、堂々と学校に通い続けていた。
休んだら負け、という考えがあかりの中にはあった。
逃げずに、徹底的に立ち向かってやる。その決意は、以前と変わっていなかった。
しかし、さすがのあかりも、あまりにも酷い生徒たちからの攻撃に、大分疲労していた。

そんなある日、あかりは、熱を出して寝込んでしまった。
「じゃあ、お母さん、学校に休みの連絡入れておくから。ご飯と薬はここに置いておくから、ちゃんと自分でとるのよ。それと、今日、宅急便が来るかもしれないから、よろしくね」そう言って、母は仕事に行った。
熱ならば、休むのは仕方がない。これを機会に、ゆっくりと休もう・・・。
そう思いながらも、あかりは、いじめのことを思い出すと、胸がきりきりと痛んだ。
「こういうときは、寝るのが一番!」そう独り言を言って、あかりは目を閉じた。

「あれっ、もうこんな時間?」いつの間にか寝ていたあかりが、起き上がって時計を見ると、もう既に夕方の六時だった。
体温計で熱を測ると、汗をびっしょりとかいたせいか、熱はすっかり下がっていた。
出来れば、明日まで熱が続いて、休めれば良かったのに、とも思ったが、体調が回復したことに喜びを感じた。
そのとき、ドンドン、と、家のドアを叩く音がした。あかりの家には、インターホンがないのだ。
宅急便かな、と思って、まだ重い体を起こすと、あかりは「はーい」と言って、ドアを開けた。
そこには、ニタニタとした表情を浮かべた、山田が立っていた。

「・・・何?」そのままドアを閉めてしまおうと思ったが、あかりは一応、山田の用件を聞くことにした。
「これ」そう言って山田が差し出したのは、学校のプリント類だった。
「ああ、ありがとう。それじゃあ」それを受け取ると、あかりはさっさとドアを閉めようとした。が、山田がドアの間に足を挟み、それは妨害された。
「何やってんのよ!」あかりが戸惑うと、山田はそのまま勢い良く、家の中に入ってきて、そのままあかりのことを押し倒すと、無理矢理キスをした。
あかりは一瞬、何が起きたのか分からなかったが、すぐにその現実に気がつくと、おもわず吐きそうになった。

「誰か、助け」あかりが助けを呼ぼうとすると、山田があかりの口を強くふさいだ。
「抵抗したら、殺す」相変わらずニタニタしながら、山田はカッターナイフを取り出して、あかりの首筋にそれを当てた。そして、あかりの服を脱がせようとしてくる。
あかりは、それだけは避けようと、またも抵抗しようとしたが、今度は山田があかりの両手首を、片手で強く掴んで、抵抗出来ないようにした。
それでもあかりが暴れようとすると「抵抗するなって、言ってんだろ!!」と言って、あかりの腹を殴りつけた。
あかりは、恐怖と痛みで、とうとう抵抗出来なくなってしまった。

あかりが着ているジャージを上にずらし「へぇ~、結構、おっぱい大きいんじゃん。でも、乳首は黒いな。さすが、ヤリマンだねぇ」と、山田が、興奮しながら言う。
「じゃあ、早速触らせてもらおうかな」と山田が言って、屈辱的なことに、あかりは山田に胸を揉まれてしまった。
「あれっ?ヤリマンの癖に、おっぱい硬くない?」そう言って、今度は、山田はあかりの乳首を舐めて、そのまま吸ってきた。
そのあまりにもおぞましい感触に、あかりは再度吐きたくなるのを、必死でこらえるしかなかった。

「おっぱい♪おっぱい♪」そう言いながら、山田はたっぷりと時間をかけて、あかりの胸をもてあそぶ。
おまけに、その光景を、山田は携帯のカメラで撮ったり、動画を撮影したりしている。
あかりは、このまま死んでしまえるならば死んでしまいたい、と思った。
「それじゃあ、次はいよいよ、下のお口の方かな~?」そう言って、山田は今度はあかりのズボンを下ろそうとしてきた。
犯される。犯されたら、本当に死のう。あかりはそう覚悟した。

その瞬間、バーン!!と、勢い良くドアが開かれた。
「あれっ・・・?先客?」今時の若者、といった印象を受ける男が、驚いたような目であかりたちを見ている。
驚いたのはあかりも同じで、山田にいたっては、驚きのあまり、硬直して、微動だにしなかった。

そのチャンスを、あかりは見逃さなかった。「助けてください!!」そう叫んで、山田から逃れる。
「えっ?プレイ中じゃないの?えっ?」男は混乱しながら「レイプってこと?でも、レイププレイが希望だったんじゃないの?これもプレイの一環?」と一人で騒いでいる。
「レイプです」あかりは、震えながらも、きっぱりと言うと「今から、警察を呼ぶので手伝ってください」と、携帯で110番しようとした。
「それは困るよ!!」と、山田ではなく、なぜか男の方が言うと、慌てて去っていった。
110番へ発信、という寸前に、いつの間にか動くことを再開した山田から、携帯を奪い取られた。
「今日のところはここまでにしてやる。でも、絶対にこのことは誰にも言うなよ。言ったら、今度は本当にレイプしてやるからな」と捨て台詞を吐くと、携帯をあかりに投げつけ、家を後にした。

あかりは、部屋のベットの中で、涙を流しながらがくがくと震えていた。
山田に掴まれた腕に、アザの跡が残っている。山田のように、小柄な男子でも力があることを、あかりは身をもって体感することとなった。
最悪だったのは、胸にまでアザが出来てしまったことだった。今まで見たことのないような色に胸がなっているのを見て、あかりは、ますます涙が止まらなくなった。
性暴力というものは、ほんの少しでも受けてしまうと、本当に辛いものなのだと、あかりは思い知らされた。

途中で訳の分からない男が来たから今回は救われたものの、いつまたこうして襲われてしまうか分からない。
しかも山田は、今回の画像を学校の人間に送ると言っていた。それも耐えがたかった。
死にたい。改めて、あかりはそう思った。
どんなにいじめを受けても、死にたいとは思わなかったのに、今のあかりには、その思いしかなかった。

泣きすぎてのどがカラカラになってしまったので、まるで這うような格好で、あかりは水を飲むために、自分の部屋から出た。
そこで、キラりと光る物を見つけた。それは、山田が置いていった、カッターナイフだった。

あかりは、迷うことなく、それを手首に押し当てて、一気に引いた。
編集 / 2012.06.07 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十三話 【いじめ、再び】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりはその日、近所の交番に訪れていた。
例の、出会い系へ画像や住所などを書き込まれてしまったことを相談するためである。
「うーん、それは確かに、心配ですねえ」年配の警察官は、あまりネット仕組みことを分かっていない様子であかりの話を聞いている。
「本来なら、サイバー犯罪相談窓口の方に相談して頂けるとありがたいんですが。私どもとしては、このあたりのパトロールを強化したいと思います。また何かあったら、すぐに言いに来てください」そう言って、警察官は話を切り上げた。
ありがとうございます、と言って、あかりは頭を下げると、交番を後にした。

サイバーなんとかに相談せずに、あえて近所の交番の方に相談しに行ったのは、あまり事を大きくしたくなかったからだった。
そちらの方に相談すると、根掘り葉掘り事情を聞かれるだろうし、そして、万が一の話ではあるが、書き込んだ人間・・・おそらくミサに話が行くことを恐れたのだ。
逆恨みが怖いということもあったが、一度は友達だった相手のことを犯罪者扱いすることは、あかりには出来なかった。
我ながら、甘い考え方だと思う。まだ、ミサに対して未練があるのかもしれない。
しかしあかりは、そんなふうに人に甘い自分が嫌いではなかった。


次の日、学校に行くと、あかりはすれ違う生徒たちに、指を指されて笑われたり、こそこそ話をされたりした。
まさか、またいじめが始まったのか。急いで教室に向かい、ドアを開けると、クラスメートたちの嘲笑で迎えられた。
『ヤリマンの決定的瞬間入手!!』と黒板に書かれているその横に、でかでかと写真が貼ってあった。
それは、あからさまに合成だと分かるものの、あかりの裸の写真だった。
あかりは教室中の視線を浴びながら、その写真を思いっきり引き剥がした。
そして、ミサたち三人に歩み寄ると「また、あんたたちの仕業?」と、睨みつけながら言った。
「はあ?」楓は憤慨しながら「アタシたちじゃねーよ。てめぇが自分で貼ったんじゃねーの?」そう言って、ミサと玲奈にも意見を求める。
「玲奈、ほんとに今度はなんにもしらなぁい」玲奈が言うと、ミサも「私には、写真を合成する技術なんてありません」と、きっぱりと言った。
その三人の態度を見るかぎり、どうもそれは本当のようだった。
あかりは、引き剥がした写真を改めて見てみると、あることに気がついた。
その写真のあかりの顔は、高橋と撮ったプリクラのうちの、一つだったのだ。

日曜日に遊んだときに「私、ネットサーフィンとかが好きなんです」と高橋は言っていた。
「画像とか集めるのも、すっごく好きで。ソフトを使って、自分で加工したりもするんですよ」とも。
まさか、高橋が・・・あかりは、その考えをすぐに頭の中から追い払った。
高橋は、自分がいじめを受けるようになっても、唯一友達でいてくれた存在だ。
その友達を疑うことは、またしても、あかりの甘さが許さなかった。
だけど、それならば、どうしてこの写真に、プリクラの顔が使われているのだろう。
あかりはすぐに、それを高橋本人に聞くことにした。
「高橋さん、この間一緒に撮ったプリクラ、誰かにあげたりしなかった?」そう聞くと「いいえ」と高橋が即答する。
それ以上は、あかりとは学校内では話したくない、というように、高橋は押し黙ってしまった。

その日から、あかりに対するいじめが再開した。
今度は、前よりも酷いもので、石を投げつけられたり、とうとう、机や教科書への落書きもされるようになった。
当然ながら、それを見せても、鈴木はまともに取り合うことをしなかった。
他の教師に相談しても、似たりよったりな対応で、スクールカウンセラーに相談しても「こんなことが続くのは、少しの間だけ。それまであなたが耐えれば良い話なのよ」と言われた。

あかりは、やはり、いじめに反撃出来るのは、自分自身しかいない、と思い知らされた。
死ね!と言われたら、殴りかかるような勢いで飛びかかっていったし、落書きは、証拠として携帯で撮っておいた。
それでも、多勢に無勢、どんなに抵抗をしても、無駄だった。

そして、あかりが今まで生きてきた中で、最悪の出来事が起きるまでに、時間はかからなかった。
編集 / 2012.06.07 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十二話 【束の間の平穏】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりが例の反撃をしてから、いじめは一気に終息へと向かっていった。
元々、玲奈の罠で始まったいじめであり、あかり自身に非はないのだから、当然といえば当然だ。
相変わらず、ミサたち三人はヤリマンだのなんだのと目の前で悪口を言ってくるが、他の生徒たちは、あかりに話しかけてくれはしないものの、露骨ないじめはしてこなくなった。
学校で話し相手がいないというのは寂しいことだったが、いじめを受けるより、孤独の方があかりはよっぽどマシだと思った。

そして、いよいよ高橋と遊ぶ日曜日になった。
あかりは、久しぶりに誰かと遊べることが、本当に嬉しかった。
とりあえずS駅で高橋と待ち合わせすると、そのままアキバへ直行することになった。
「高橋さんって、そういう格好するんだね・・・」あかりは、高橋のことをまじまじと見つめた。
いわゆるゴシックロリータと言われるような服装に、黒い傘。いつもの眼鏡は、紫のカラーコンタクトに代わっている。
高橋は、酷い猫背なので、歩く姿が、まるで魔女のようだった。
「こういう格好が、昔から好きなんです。黒魔術に興味があって」と、案の定、高橋はそう答えた。

高橋に連れていかれたのは、メイド喫茶でも、某アイドルグループの劇場でもなく、裏通りの、パソコンショップだった。
いかにも、といった感じの男たちが、狭い店内にひしめいている。
「私、ちょっとジャンク品漁りますから」そう言って、高橋は、店の片隅に置いてあるダンボール箱を漁り始めた。
あかりがあっけにとられていると「良いパーツは、あらかた持ってかれちゃったみたいです。お茶でもしましょうか」と、高橋がマイペースに言った。

某ファーストフード店に入り、長蛇の列を並んでいると、唐突に高橋が「ところで、いじめの方は大丈夫ですか?」と、オブラートに包むことなく聞いてきた。
「まあ、なんとか」あかりは、少し間を置いてから答えた。
「大川さんがいじめられるようになったのって、そもそも、私と仲良くしたせいなんですよね?」またも、高橋がストレートに聞く。
「高橋さんのせいじゃないよ。自分がどっちつかずの、優柔不断だったのがいけなかったんだ。これからは、仲良くしたい人とは仲良くする。そう決めたんだ」あかりは、今度はきっぱりとそう答えた。
「ありがとうございます。照れます」そう言って、高橋はにっこりと笑った。
その笑顔はとても素敵で、高橋は、ミサたちが言っていたような不細工ではなく、意外と可愛い顔をしているんだな、とあかりは思った。

「私、プリクラなんて、生まれてから初めてです」二人は、次はゲームセンターに行った。
最初のうちはクレーンゲームや、音楽ゲームをやったりしていたのだが、お金がいくらあっても足りないことに気がつき、とりあえず、今日の記念にプリクラを撮ることに決めたのだ。
「プリクラ撮ったことないなんて、珍しいね」そう言ったあかりも、プリクラを初めて撮ったのは、ミサたち三人とだった。
そういえば、この機種で四人でプリクラを撮ったんだったな・・・と、あかりは寂しく思った。
「物凄く目が大きく撮れてますね」出来上がったプリクラを見ると、確かに相当目が大きく写っている。
「宇宙人みたいだね」あかりがそう言うと、高橋はツボに入ったのか、大爆笑していた。

「今日は、ありがとう。楽しかったよ」と帰り道に言ったあかりは、高橋と過ごすことで、不思議な楽しさを感じられたことに、改めて気がついた。
「こちらこそ、本当にありがとうございました」高橋が、深々とお辞儀をする。
「学校ではお話出来ませんが、またこうして遊んだり、メールしたりしましょうね」と、高橋が続けて言う。

最初とは、すっかり立場が逆転したなと思い、あかりは苦笑しながら「そうだね」と言った。
編集 / 2012.06.07 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
お知らせ
無事に退院することが出来ました。ありがとうございます^^
新しいブログもよろしくお願い致します。
6月27日
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