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【ブログの移転に関して】
カテゴリ: 【その他】 / テーマ: 更新報告・お知らせ / ジャンル: 小説・文学
本日(6月27日)、無事に退院することが出来ました。
皆さんのあたたかい声援のおかげです。本当にありがとうございます。
これを良い機会に、ブログを移転することにしました。
お手数ですが、これからはLAST SMILEにぜひとも遊びにきてください^^

これからもよろしくお願い致します。

ブログ管理人 麻莉
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編集 / 2012.06.13 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
ショートショート 【誰も分からない】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
君は

かわいそうな人


だからこそ

守ってあげたくない


守るよりも

僕の

好き勝手にする方が

楽しそうだから


ほら

また君の目が

言ってるよ

”私をかまってください”

って


だから僕は

それに答えてあげていた


そう

みんなが

君に

そうしているように


それなのに

君は

死んだ


『いじめが辛い』



遺書を残して


えっ

いじめなんて

誰が

していたの・・・?


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編集 / 2012.06.11 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
ショートショート 【掃除のおばあさん】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
ある有名お嬢様学校の帰宅風景。

生徒たちは、平気でお菓子のゴミなどを校門前に捨てていく。

それを、毎日毎日、必死になって掃除をしているおばさん、というよりは、もうおばあさんぐらいの年齢の人がいた。

「あんな歳になってまで働かなくちゃいけないなんて、惨めねぇ~」

おばあさんのそばを通った生徒の集団が、くすくすと笑いながら、そう吐き捨てて帰っていった。


~~

「・・・もう、掃除などやる必要はないのではないですか、理事長」

「掃除は私の趣味だからね。気にすることはないよ」

「しかし・・・」

「ゴミを捨てても構わない。私だって、そんな時期があったものさ。それを片づける番が、私にまわってきただけの話」


「でもね、私はいつだって、心は捨てていなかったつもりだけどね」


~~

という妄想を重ねながら、日々屈辱に耐えつつ、黙々と掃除をするおばあさんであった。


  → Read more...
編集 / 2012.06.11 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
ショートショート 【手遅れ】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
男は死ぬことにした


生きることに

疲れ果てて


この世に

絶望して


飛び降りた


高い高い

ビルの屋上から


落下しながら

最後に彼が見たものは


楽しそうに笑いあう

人々だった


男は思った

『死ななければ良かった』と


でも

もう

気づいたときには


手遅れだった


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編集 / 2012.06.10 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
ショートショート 【復讐】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
自分は”復讐”のことだけを考えていた。

だからこそ、これまで生きてこれたのかもしれない。

小学校・中学校で受けた、同級生からの壮絶ないじめ。

おかげで、高校にも行けず、今はフリーターをしている。

毎日毎日、悪夢を見た。

僕は、いつまでたってもあのころのいじめられっこのままだった。


~~

仕事をしている最中でさえも、復讐のことばかり考えていた。

どうやってあいつらの人生を台無しにしてやろうか。

今時は復讐代行屋なんてものもあるらしいが、そんなものに頼む気はさらさらなかった。

自分の手で、あいつらに怨みを晴らしてやる。

それだけが、生きる原動力だった。


~~

復讐の機会は、あっさりと訪れた。

それは、成人式。

クラスの中心グループだった奴らは、間違いなく来るだろう。

僕は、黙って成人式の知らせの紙を握り締めた。


~~

「あっれ~、久しぶりじゃん、××!!」

こそこそ隠れるように成人式の会場に向かった僕に、奴らは声をかけてきた。

「俺たち、あれからずっと心配してたんだよ・・・良かった、元気そうで」

奴らはそれほど変わっていなかった。

でも、一つだけ違うところがあった。

俺に対しての、悪意がなくなっていたこと・・・。


~~

「そうなんだ~、××は今フリーターなんだ」

「××って、絵を描くのとか得意だったよね。その系の道は?」

二次会の居酒屋で、ごくごく普通に元同級生たちと会話した。

恐怖心もあった。

だけど・・・楽しかった。


~~

「じゃあ、また連絡するよ、××ー!!」

「今度は遊園地でも行こうね☆」

手をひらひらと振る僕の中には、すっかりとなくなっているものがあった。

人を、怨む気持ち・・・。


~~

心にぽっかりと穴があいた気分だった。

復讐のために用意した、ナイフを鏡の前に置く。

考えてみれば、こんな小さなナイフじゃ、誰も殺せないな・・・。

僕はいったい、何をしたかったんだろう?


~~

分かった。僕は、普通にみんなと、仲良くしたかっただけなんだ。

それなら、この怨む気持ちは、誰に対して向けたら良いんだろう?


~~

そうだ、いるじゃないか、復讐する相手なら。

この、鏡の中に・・・。

僕は、黙ってそれを自分の胸に・・・


  → Read more...
編集 / 2012.06.10 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十六話 【癒えない傷】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
ある日の朝、顔を伏せ、たどたどしい足取りながらも、必死に学校へ向かうあかりの姿があった。
あれから結局、数日間は学校を欠席してしまった。
あかりは、今まで病気が長引くといったこともなかったため、母は不審に思っているようだったが、あかりが辛そうに寝込んでいる姿に、あまり深く追求はしてこなかった。

あかりの頭の中では、様々な思いがぐるぐると回っていた。
日々の凄惨ないじめ。山田によるレイプ未遂。そして、あまりにも意外な、山田をけしかけたかと思われる人物・・・。
あかりは、もはや、自分ではどうすれば良いのか、全く分からなかった。
死にたい。ただただそれだけを思って、ベットの中に引きこもって過ごした。
だが、それでも、あかりはまだ、強い自分を完全に失ってはいなかった。
一度、学校に行って、高橋と接して、様子を見てみよう。数日間で、あかりはそこまで精神状態を回復させることが出来たかのように見えた。
それは大間違いだったと気がついたのは、すぐのことだったのだが。

いつものように、何か言われたり、されたりしないか、おびえながら学校へ向かう。
生徒たちは、相変わらず、あかりのことを見つけると、それぞれの形でいじめを行ってきた。
あかりは、生徒たちのその態度を見て、もはや抵抗する勇気は起きず、一つ一つのことにダメージを受けてしまった。
それでも、休む前に比べて、いじめの内容は、それほど悪化はしていなかった。ということは、山田が先日の画像を送りつけたりはしていないということなので、それに関しては、ほっとした。
しかし、問題は山田本人である。あかりのことを見たら、一体何を言ってくるか分かったものではない。
ましてや、教室に、例の画像が貼りつけられてしまっていたら・・・。

おそるおそる教室に入ると、今最も顔を合わせたくない人物、山田が、相変わらず気持ち悪い、ニタニタとした表情を浮かべて、うろうろとしていた。
あかりは、山田の姿を見るだけで、ここから逃げ出してしまいたい気持ちにとらわれた。
一通目のメールのあとも『学校、早くこいや』『また、いじめてやるからな』などと、山田からのメールは続いていた。
そのために、すぐにまたアドレスを変えたのだが、山田に対する恐怖心は深まる一方だった。

「ヤリマン~、なんで学校来なかったのぉ~?サボり?それとも、アノ日だったとか?」あかりに気がつくと、すぐに山田が近づいてきて、あかりをはやし立てる。
あかりは、吐き気がこみ上げてきた。山田にされた行為が、改めて脳裏に浮かぶ。
「この間の画像、待ち受けにした?」あかりをいやらしい眼で見ながら、こっそりと山田が言った。
あかりは、山田に殺意を覚えた。そうだ、こんな奴のために自分が死んでしまうぐらいなら、いっそのこと、こいつのことを殺してしまおうか。

あかりは、何かにとりつかれたかのように、自分のロッカーの中の彫刻刃を取り出した。
再度、山田の方へと近づくと、あかりは、それを振りかざし、能面のような表情で、山田を切りつけようとした。

「あかり、やめろ!!」その大声で、あかりは我に返った。
気がつくと、クラス中の生徒が、何事かとあかりのことを見ていた。
山田は、これ幸いにと、うわわっ、という情けない声を出しながら、教室の外へと逃げ出した。
「何やってんだよ、ったく」そう言いながら、放心状態のあかりから、大声を出した人物が、彫刻刃を奪い取る。それは、楓だった。
「楓ちゃん・・・?」あかりがぼんやりと言うと「別に、てめぇのこと許したわけじゃねぇから」そう言って、勝手に照れながら自分の席に戻る。

「何があった!!」今度は、鈴木が怒鳴りながら勢い良く教室に入ってきた。誰かが、鈴木のことを呼んだらしい。
その問いかけに、誰も答えることがなかった。当然だが、あかりも何も言わなかった。
「おい、誰か答えろ!!」鈴木が更に生徒たちのことを怒鳴りつけるが、お互いに顔を見合わせるだけで、一向に誰も口を割ろうとはしない。
「大川が、突然暴れ出したということで良いんだな?」そう言って、鈴木は、近くにいた生徒のことを、威圧的に睨む。
それに押されたのか、こくり、とその生徒は頷いた。
鈴木は、真っ青になると「大川、放課後、事情を説明しろ」それだけ言って、また大慌てで教室を後にした。

その日、あかりはほとんどの時間を汚い方のトイレの中で過ごした。
休み時間はもちろんのこと、授業の時間でさえも、である。それを、誰も呼びに来ることはなかった。
楓が止めてくれたから良かったものの、あのままだったら、あかりは、山田のことを本当に殺してしまっていただろう。
それだけ、自分が心に傷をおってしまっているということに、あかりは深い悲しみを覚えた。
ましてや、他人のことを本気で殺そうとするなんて・・・自分の中にあった残虐性も、あかりには許すことが出来なかった。
あかりは、服が汚れてしまうのも構わず、個室の中に座りこんで、ずっとずっと泣いていた。

それでも、いつかは学校から帰らないといけない。
あかりは、重すぎる腰を無理矢理上げると、教室へと向かった。
もう既に放課後になっているようで、教室内には、誰もいなかった。
そのことにほっとしながら、あかりは帰り支度を始める。

そこへ、鈴木がやってきた。「今日一日、一体何をやっていたんだ」あからさまに不機嫌そうに、あかりに聞く。
「・・・」あかりは、鈴木のことを無視した。もはや、鈴木とは何も話したくなかった。
「お前、俺のことをおちょくってるのか!!」そう言って切れ出すと、鈴木は、強引にあかりの腕を引っ張った。
鈴木のその行動に、あかりは、嫌でも山田から受けたレイプ未遂のことを思い出さされた。

「いやあああああああああああ」パニックになったあかりは、無理矢理鈴木の手を引き剥がすと、教室の窓に突進し、飛び降りようとした。
「おい、何やってるんだ!!」鈴木が慌てて近づいてくるが、そのことに、あかりは余計に恐怖心をあおられた。
近くにあった椅子を鈴木に向かって投げ飛ばし、窓枠に手をかける。

そのまま、あかりの体は、宙に舞った。
編集 / 2012.06.09 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十五話 【疑惑】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
「そうなんだぁ、最後までヤれなかったんだぁ」山田は、あかりの家を後にすると、すぐに自分の好きな女に電話をかけた。
「邪魔が入っちゃったから・・・でも、画像と動画は撮ったから、送っておくよ」残念そうな声を出す女に対し、媚びるように、山田は言う。
「良くやったね。えらぁい」女は、そう言ってから、一瞬間を置くと「あの女、苦しんでた?」と山田に聞く。
「スゲーびびってたよ。やっぱり、ヤリマンでも、レイプは怖いんだな」山田のその答えに、女は心から満足そうに「ふふ、それなら良かったぁ」と言った。

手首を切ったあと、あかりはすぐに正気を取り戻して、カッターを床に置いた。痛みはそれほど感じなかった。
しかし、かなり出血して、腕は血まみれになり、床にまで血が広がってしまっていた。
自分でも驚くほど冷静に、あかりは行動した。まずは腕を洗い、切った箇所に絆創膏を貼る。
それでもみるみるうちに血はまた溢れてきたので、重ね貼りをした。
次は、床の血が固まってしまう前に拭かないと、と思い、タオルと新聞紙で、床を綺麗にした。
床に転がっているカッターを見ていると、また手首を切りそうになってしまったので、あかりはそれを自分の部屋の押入れに放りこんだ。

一通りの処理を済ませると、血のついた服を脱ぎ捨て、あかりは風呂に入って、必死に体を洗った。
特に、山田に触られ、舐められてしまった胸を、赤くなって傷ついてしまうほどに。
それでも、あのおぞましい感触は、決して消えることがなかった。
あかりは、自分は汚れてしまった、と思った。
もう、二度と涙は出ないのではないか、というぐらいに泣いた。シャワーがそれを、洗い流してくれた。

次の日、あかりは、ベットから出ることが出来なかった。
いや、そればかりか、体を動かすことさえも、満足に出来ない。
昨日のことが夢であれば良かったのに、と思ったが、記憶は、はっきりと残ってしまっていた。
「どうしたの?もう、学校に行く支度をしないと。まだ、熱が下がってないの?」心配した様子で、母が部屋に入ってくる。
あかりは、咄嗟に手首を隠して「うん・・・まだ、調子悪いみたい」と言った。
「顔色が凄く悪いものね。また学校に連絡を入れておくけど、今日で治すこと。それじゃあ、お母さんは、仕事に行ってくるから」そう言って出ていこうとする母に対して、あかりはおもわず、待って!と叫びたくなった。
外へは、出たくない。だけど、家に一人でいることは、もっと怖かった。
それでも、助けを求める声は、出てこなかった。あかりは、またも一人で家で過ごすことになった。

その日の学校では、相変わらず、サンコイチが一緒に話をしていた。
「ヤリマンの奴、とうとう登校拒否になりやがったな。つまんねぇの」楓が言うと、玲奈も「いじめる相手がいなくて、玲奈、つまんなぁい!」と言った。
しかし、ミサだけは、複雑な表情を浮かべて、黙っていた。
「ミサちゃん、どぉしたの?ヤリマンのことが恋しいのぉ?」笑いながら玲奈が聞いても、ミサは黙ったままだった。
「おい、ミサ、どうしたんだよ。まさか、ほんとにヤリマンのことが・・・」「違う!」楓の発言に、ミサは突然、大声を出した。
二人があっけにとられていると、ミサは「ごめん、今、生理前でイライラしてるんだ」と言って、教室から出て、どこかへ行ってしまった。
「なんなんだ、あいつ?」楓が首をかしげると、玲奈が「ヤリマンのコト、一番いじめてたのはミサちゃんなのにねぇ。玲奈、意味わかんなぁい」と、少し苛立った様子で言った。

そのとき、山田が玲奈に近づいて「これ」と言って、携帯の画面を見せてきた。
「ちょっと、近づかないでよぉ」そう言いながらも、玲奈は画面を覗きこむ。
「うっわ、マジキモい」画面を見た玲奈が、吐く真似をしながら言った。
それは例の、あかりを襲ったときの画像だった。
「なんだよ、アタシにも見せろよ」そう言って、楓は山田から携帯を奪い取ると、自分も画面を見た。
「ねっ、超キモくない?」玲奈が、楓に意見を求める。「キモすぎだな」楓はそう言って、すぐに山田に携帯を返した。
山田は、いつものようにニタニタとしているだけで、何も言わなかった。
「山田ぁ、この画像、どこで手に入れたのぉ?」玲奈が聞くと「俺、ヤリマンとセフレなんだ。動画もあるよ」言うが早いが、山田は、今度は動画を再生して、二人に携帯を見せる。
山田に胸を弄ばれ、本気で嫌そうな表情を浮かべているあかりの姿を見て「いや、これ、レイプだろ」と、楓にしては珍しく、難しい顔をしながら言う。
「いくらあいつがヤリマンだからって、ほんとにレイプしちゃダメでしょ・・・」玲奈も、珍しく冷静な意見を述べる。
「最後まではヤれてないから、今度こそは最後までヤってやるんだ」またもニタニタしながら、山田が言った。
その山田の発言に、さすがの二人も顔を見合わせて、言葉が出てこなかった。

あまりにも酷い現実から逃れるように、あかりが死んだように眠っていると”ファイト!”の着信音で、目を覚めさせられた。
「誰・・・」のろのろとした動きで、あかりが携帯を見ると、それは、知らないアドレスからのメールだった。
『昨日の画像と動画、送っておいてやるよ待ち受けにでもしておきな』そのメールには、実際に昨日のレイプ未遂のときの画像と動画が添付されていた。
明らかに、送り主は山田だった。またもパニック状態になりそうな自分を必死に落ち着かせながら、あかりは、なぜ山田からメールが送られてきたのかを考えた。
あかりは当然、山田には自分のアドレスを教えてなどいなかったのだ。
ということは、誰かが山田に、自分のアドレスを教えたことになる。
そうすると、出会い系の件があってアドレスを変えたばかりだから、それは、今のアドレスを知っている人間に限られる。
しかし、学校の中に、新しいアドレスを教えた相手など、いただろうか。
あかりは、更に考えを進ませると、とんでもない、恐ろしい事実に気がついてしまった。

そう、あかりの新しいアドレスを知っているのは、高橋だけだったのだ。
編集 / 2012.06.08 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十四話 【死にたい】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
いじめが過熱していく中、それでもあかりは、堂々と学校に通い続けていた。
休んだら負け、という考えがあかりの中にはあった。
逃げずに、徹底的に立ち向かってやる。その決意は、以前と変わっていなかった。
しかし、さすがのあかりも、あまりにも酷い生徒たちからの攻撃に、大分疲労していた。

そんなある日、あかりは、熱を出して寝込んでしまった。
「じゃあ、お母さん、学校に休みの連絡入れておくから。ご飯と薬はここに置いておくから、ちゃんと自分でとるのよ。それと、今日、宅急便が来るかもしれないから、よろしくね」そう言って、母は仕事に行った。
熱ならば、休むのは仕方がない。これを機会に、ゆっくりと休もう・・・。
そう思いながらも、あかりは、いじめのことを思い出すと、胸がきりきりと痛んだ。
「こういうときは、寝るのが一番!」そう独り言を言って、あかりは目を閉じた。

「あれっ、もうこんな時間?」いつの間にか寝ていたあかりが、起き上がって時計を見ると、もう既に夕方の六時だった。
体温計で熱を測ると、汗をびっしょりとかいたせいか、熱はすっかり下がっていた。
出来れば、明日まで熱が続いて、休めれば良かったのに、とも思ったが、体調が回復したことに喜びを感じた。
そのとき、ドンドン、と、家のドアを叩く音がした。あかりの家には、インターホンがないのだ。
宅急便かな、と思って、まだ重い体を起こすと、あかりは「はーい」と言って、ドアを開けた。
そこには、ニタニタとした表情を浮かべた、山田が立っていた。

「・・・何?」そのままドアを閉めてしまおうと思ったが、あかりは一応、山田の用件を聞くことにした。
「これ」そう言って山田が差し出したのは、学校のプリント類だった。
「ああ、ありがとう。それじゃあ」それを受け取ると、あかりはさっさとドアを閉めようとした。が、山田がドアの間に足を挟み、それは妨害された。
「何やってんのよ!」あかりが戸惑うと、山田はそのまま勢い良く、家の中に入ってきて、そのままあかりのことを押し倒すと、無理矢理キスをした。
あかりは一瞬、何が起きたのか分からなかったが、すぐにその現実に気がつくと、おもわず吐きそうになった。

「誰か、助け」あかりが助けを呼ぼうとすると、山田があかりの口を強くふさいだ。
「抵抗したら、殺す」相変わらずニタニタしながら、山田はカッターナイフを取り出して、あかりの首筋にそれを当てた。そして、あかりの服を脱がせようとしてくる。
あかりは、それだけは避けようと、またも抵抗しようとしたが、今度は山田があかりの両手首を、片手で強く掴んで、抵抗出来ないようにした。
それでもあかりが暴れようとすると「抵抗するなって、言ってんだろ!!」と言って、あかりの腹を殴りつけた。
あかりは、恐怖と痛みで、とうとう抵抗出来なくなってしまった。

あかりが着ているジャージを上にずらし「へぇ~、結構、おっぱい大きいんじゃん。でも、乳首は黒いな。さすが、ヤリマンだねぇ」と、山田が、興奮しながら言う。
「じゃあ、早速触らせてもらおうかな」と山田が言って、屈辱的なことに、あかりは山田に胸を揉まれてしまった。
「あれっ?ヤリマンの癖に、おっぱい硬くない?」そう言って、今度は、山田はあかりの乳首を舐めて、そのまま吸ってきた。
そのあまりにもおぞましい感触に、あかりは再度吐きたくなるのを、必死でこらえるしかなかった。

「おっぱい♪おっぱい♪」そう言いながら、山田はたっぷりと時間をかけて、あかりの胸をもてあそぶ。
おまけに、その光景を、山田は携帯のカメラで撮ったり、動画を撮影したりしている。
あかりは、このまま死んでしまえるならば死んでしまいたい、と思った。
「それじゃあ、次はいよいよ、下のお口の方かな~?」そう言って、山田は今度はあかりのズボンを下ろそうとしてきた。
犯される。犯されたら、本当に死のう。あかりはそう覚悟した。

その瞬間、バーン!!と、勢い良くドアが開かれた。
「あれっ・・・?先客?」今時の若者、といった印象を受ける男が、驚いたような目であかりたちを見ている。
驚いたのはあかりも同じで、山田にいたっては、驚きのあまり、硬直して、微動だにしなかった。

そのチャンスを、あかりは見逃さなかった。「助けてください!!」そう叫んで、山田から逃れる。
「えっ?プレイ中じゃないの?えっ?」男は混乱しながら「レイプってこと?でも、レイププレイが希望だったんじゃないの?これもプレイの一環?」と一人で騒いでいる。
「レイプです」あかりは、震えながらも、きっぱりと言うと「今から、警察を呼ぶので手伝ってください」と、携帯で110番しようとした。
「それは困るよ!!」と、山田ではなく、なぜか男の方が言うと、慌てて去っていった。
110番へ発信、という寸前に、いつの間にか動くことを再開した山田から、携帯を奪い取られた。
「今日のところはここまでにしてやる。でも、絶対にこのことは誰にも言うなよ。言ったら、今度は本当にレイプしてやるからな」と捨て台詞を吐くと、携帯をあかりに投げつけ、家を後にした。

あかりは、部屋のベットの中で、涙を流しながらがくがくと震えていた。
山田に掴まれた腕に、アザの跡が残っている。山田のように、小柄な男子でも力があることを、あかりは身をもって体感することとなった。
最悪だったのは、胸にまでアザが出来てしまったことだった。今まで見たことのないような色に胸がなっているのを見て、あかりは、ますます涙が止まらなくなった。
性暴力というものは、ほんの少しでも受けてしまうと、本当に辛いものなのだと、あかりは思い知らされた。

途中で訳の分からない男が来たから今回は救われたものの、いつまたこうして襲われてしまうか分からない。
しかも山田は、今回の画像を学校の人間に送ると言っていた。それも耐えがたかった。
死にたい。改めて、あかりはそう思った。
どんなにいじめを受けても、死にたいとは思わなかったのに、今のあかりには、その思いしかなかった。

泣きすぎてのどがカラカラになってしまったので、まるで這うような格好で、あかりは水を飲むために、自分の部屋から出た。
そこで、キラりと光る物を見つけた。それは、山田が置いていった、カッターナイフだった。

あかりは、迷うことなく、それを手首に押し当てて、一気に引いた。
編集 / 2012.06.07 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十三話 【いじめ、再び】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりはその日、近所の交番に訪れていた。
例の、出会い系へ画像や住所などを書き込まれてしまったことを相談するためである。
「うーん、それは確かに、心配ですねえ」年配の警察官は、あまりネット仕組みことを分かっていない様子であかりの話を聞いている。
「本来なら、サイバー犯罪相談窓口の方に相談して頂けるとありがたいんですが。私どもとしては、このあたりのパトロールを強化したいと思います。また何かあったら、すぐに言いに来てください」そう言って、警察官は話を切り上げた。
ありがとうございます、と言って、あかりは頭を下げると、交番を後にした。

サイバーなんとかに相談せずに、あえて近所の交番の方に相談しに行ったのは、あまり事を大きくしたくなかったからだった。
そちらの方に相談すると、根掘り葉掘り事情を聞かれるだろうし、そして、万が一の話ではあるが、書き込んだ人間・・・おそらくミサに話が行くことを恐れたのだ。
逆恨みが怖いということもあったが、一度は友達だった相手のことを犯罪者扱いすることは、あかりには出来なかった。
我ながら、甘い考え方だと思う。まだ、ミサに対して未練があるのかもしれない。
しかしあかりは、そんなふうに人に甘い自分が嫌いではなかった。


次の日、学校に行くと、あかりはすれ違う生徒たちに、指を指されて笑われたり、こそこそ話をされたりした。
まさか、またいじめが始まったのか。急いで教室に向かい、ドアを開けると、クラスメートたちの嘲笑で迎えられた。
『ヤリマンの決定的瞬間入手!!』と黒板に書かれているその横に、でかでかと写真が貼ってあった。
それは、あからさまに合成だと分かるものの、あかりの裸の写真だった。
あかりは教室中の視線を浴びながら、その写真を思いっきり引き剥がした。
そして、ミサたち三人に歩み寄ると「また、あんたたちの仕業?」と、睨みつけながら言った。
「はあ?」楓は憤慨しながら「アタシたちじゃねーよ。てめぇが自分で貼ったんじゃねーの?」そう言って、ミサと玲奈にも意見を求める。
「玲奈、ほんとに今度はなんにもしらなぁい」玲奈が言うと、ミサも「私には、写真を合成する技術なんてありません」と、きっぱりと言った。
その三人の態度を見るかぎり、どうもそれは本当のようだった。
あかりは、引き剥がした写真を改めて見てみると、あることに気がついた。
その写真のあかりの顔は、高橋と撮ったプリクラのうちの、一つだったのだ。

日曜日に遊んだときに「私、ネットサーフィンとかが好きなんです」と高橋は言っていた。
「画像とか集めるのも、すっごく好きで。ソフトを使って、自分で加工したりもするんですよ」とも。
まさか、高橋が・・・あかりは、その考えをすぐに頭の中から追い払った。
高橋は、自分がいじめを受けるようになっても、唯一友達でいてくれた存在だ。
その友達を疑うことは、またしても、あかりの甘さが許さなかった。
だけど、それならば、どうしてこの写真に、プリクラの顔が使われているのだろう。
あかりはすぐに、それを高橋本人に聞くことにした。
「高橋さん、この間一緒に撮ったプリクラ、誰かにあげたりしなかった?」そう聞くと「いいえ」と高橋が即答する。
それ以上は、あかりとは学校内では話したくない、というように、高橋は押し黙ってしまった。

その日から、あかりに対するいじめが再開した。
今度は、前よりも酷いもので、石を投げつけられたり、とうとう、机や教科書への落書きもされるようになった。
当然ながら、それを見せても、鈴木はまともに取り合うことをしなかった。
他の教師に相談しても、似たりよったりな対応で、スクールカウンセラーに相談しても「こんなことが続くのは、少しの間だけ。それまであなたが耐えれば良い話なのよ」と言われた。

あかりは、やはり、いじめに反撃出来るのは、自分自身しかいない、と思い知らされた。
死ね!と言われたら、殴りかかるような勢いで飛びかかっていったし、落書きは、証拠として携帯で撮っておいた。
それでも、多勢に無勢、どんなに抵抗をしても、無駄だった。

そして、あかりが今まで生きてきた中で、最悪の出来事が起きるまでに、時間はかからなかった。
編集 / 2012.06.07 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十二話 【束の間の平穏】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりが例の反撃をしてから、いじめは一気に終息へと向かっていった。
元々、玲奈の罠で始まったいじめであり、あかり自身に非はないのだから、当然といえば当然だ。
相変わらず、ミサたち三人はヤリマンだのなんだのと目の前で悪口を言ってくるが、他の生徒たちは、あかりに話しかけてくれはしないものの、露骨ないじめはしてこなくなった。
学校で話し相手がいないというのは寂しいことだったが、いじめを受けるより、孤独の方があかりはよっぽどマシだと思った。

そして、いよいよ高橋と遊ぶ日曜日になった。
あかりは、久しぶりに誰かと遊べることが、本当に嬉しかった。
とりあえずS駅で高橋と待ち合わせすると、そのままアキバへ直行することになった。
「高橋さんって、そういう格好するんだね・・・」あかりは、高橋のことをまじまじと見つめた。
いわゆるゴシックロリータと言われるような服装に、黒い傘。いつもの眼鏡は、紫のカラーコンタクトに代わっている。
高橋は、酷い猫背なので、歩く姿が、まるで魔女のようだった。
「こういう格好が、昔から好きなんです。黒魔術に興味があって」と、案の定、高橋はそう答えた。

高橋に連れていかれたのは、メイド喫茶でも、某アイドルグループの劇場でもなく、裏通りの、パソコンショップだった。
いかにも、といった感じの男たちが、狭い店内にひしめいている。
「私、ちょっとジャンク品漁りますから」そう言って、高橋は、店の片隅に置いてあるダンボール箱を漁り始めた。
あかりがあっけにとられていると「良いパーツは、あらかた持ってかれちゃったみたいです。お茶でもしましょうか」と、高橋がマイペースに言った。

某ファーストフード店に入り、長蛇の列を並んでいると、唐突に高橋が「ところで、いじめの方は大丈夫ですか?」と、オブラートに包むことなく聞いてきた。
「まあ、なんとか」あかりは、少し間を置いてから答えた。
「大川さんがいじめられるようになったのって、そもそも、私と仲良くしたせいなんですよね?」またも、高橋がストレートに聞く。
「高橋さんのせいじゃないよ。自分がどっちつかずの、優柔不断だったのがいけなかったんだ。これからは、仲良くしたい人とは仲良くする。そう決めたんだ」あかりは、今度はきっぱりとそう答えた。
「ありがとうございます。照れます」そう言って、高橋はにっこりと笑った。
その笑顔はとても素敵で、高橋は、ミサたちが言っていたような不細工ではなく、意外と可愛い顔をしているんだな、とあかりは思った。

「私、プリクラなんて、生まれてから初めてです」二人は、次はゲームセンターに行った。
最初のうちはクレーンゲームや、音楽ゲームをやったりしていたのだが、お金がいくらあっても足りないことに気がつき、とりあえず、今日の記念にプリクラを撮ることに決めたのだ。
「プリクラ撮ったことないなんて、珍しいね」そう言ったあかりも、プリクラを初めて撮ったのは、ミサたち三人とだった。
そういえば、この機種で四人でプリクラを撮ったんだったな・・・と、あかりは寂しく思った。
「物凄く目が大きく撮れてますね」出来上がったプリクラを見ると、確かに相当目が大きく写っている。
「宇宙人みたいだね」あかりがそう言うと、高橋はツボに入ったのか、大爆笑していた。

「今日は、ありがとう。楽しかったよ」と帰り道に言ったあかりは、高橋と過ごすことで、不思議な楽しさを感じられたことに、改めて気がついた。
「こちらこそ、本当にありがとうございました」高橋が、深々とお辞儀をする。
「学校ではお話出来ませんが、またこうして遊んだり、メールしたりしましょうね」と、高橋が続けて言う。

最初とは、すっかり立場が逆転したなと思い、あかりは苦笑しながら「そうだね」と言った。
編集 / 2012.06.07 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十一話 【反撃】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりへのいじめは日に日にエスカレートしてゆき、言葉や態度でのいじめだけでなく、下駄箱や机の中にゴキブリの死骸が毎日入れられるようにもなった。
机や教科書への落書きなどの、証拠が残るいじめなら、教師たちに訴えることも出来るのだが、このように、いくらでも言い逃れ出来る手段を使ったいじめだけをされた。
それでも、黒板に『ヤリマン死刑』などと書かれる日もあったが、鈴木は「誰だ!!こんなくだらない落書きをしたのは。消すのが面倒だろう」と言うだけだった。

「きっもい机はおっかたずけ~♪」また違う日の朝、山田が、聞いているだけで腹が立ってくるような歌を歌いながら、あかりの机を教室の外に出していた。
それは、玲奈の指示でやっていることは明白で、終わった後に「山田、可愛いねぇ」とか言いながら、玲奈が山田のことを褒めていた。
これは、反撃のチャンスかもしれない、とあかりは思った。
自ら自分の机を外に出す馬鹿はいない。机が外に出ているところを見せつけたら、さすがの鈴木も、何か対応をしてくれるのではないか。

あかりは、鈴木が教室の前に来たときに、おもいきって「すみません、私の机が、外に出されたんですけど」と言った。
「ああ?」と鈴木が言う。明らかに面倒そうな顔をしている。
「お前の机が邪魔だったんだろう」そう言って、鈴木はさっさと教室に入ろうとした。
「待ってください!」あまりに酷い鈴木の対応にも、あかりはめげなかった。
「実は、こういう嫌がらせを、少し前から、毎日されるようになったんです。黒板に書かれてた、ヤリマンっていうのも、私のことです」泣き出しそうになりながらも、あかりは必死に訴えた。
それを聞いた鈴木は、表情が固まって、しばらく何も言わなかった。
あかりは、ごくり、と唾を飲みこんで、鈴木の次の発言を待った。
「とりあえず、我慢しなさい」そう言って、鈴木はあかりの肩を叩くと、教室に入り、例によって「静かにしろ!!」と生徒たちに怒鳴った。

あかりは、鈴木の対応に絶望した。
元々、全く頼れないことは分かっていたが、これほどまでに酷いとは。
上履きの件では興味を示したかのように見えたのに、結局は、臭い物には蓋をするという主義なのだろう。

あかりは、机を自分の手で教室に戻し、席に着くと、机の上に突っ伏した。
ミサが「なんだか、鈴木と楽しそうに話してたね♪もう、鈴木ともやったの?」と言ってきたが、無視をした。
それを聞いた他の生徒も、実際に鈴木とそういう関係なんだろうかとか、キモいとか、そんなことを一斉に言い出す。
「玲奈、こんな奴がカレシとえっちしたなんて、耐えられなぁい」そう言って、玲奈がまた泣き真似をし始めた。
ミサは、玲奈を慰めながら「私、あんたと一瞬でも友達だったことが、恥ずかしいわ」と、あかりを心から見下しているような眼で見て言った。

ミサのその発言で、あかりの中で、何かが壊れる音がした。
「てめえ、いい加減にしろよ!!」そう叫んで、勢い良く席から立ち上がり、玲奈に歩み寄って「泣き真似してんじゃねえよ、このパチこき野郎。ヤリマンなのは、てめえの方だろうが」と言って、玲奈のことを引っぱたいた。
一瞬、教室中がシーンとなった。鈴木も、何が起きたのか、すぐに事態が飲みこめないのか、ぽかーんとしている。
静寂を引き裂いたのは、玲奈の悲鳴に近い泣き声だった。
「痛い、痛いよぉ」そう言って、今度は演技ではない様子で、本気で泣いている。
「てめぇ、ふざけたことしやがって・・・」怒り心頭といった形相で、楓が近づいてきた。
「また殴りたいなら、そうすれば?私はこいつと違って、泣いたりしないけどね!」玲奈を指差して、あかりは言った。
楓は、あかりのその堂々とした態度に押されたのか、畜生、と悔しそうに言って、手を出してこなかった。

「おい、これは一体どういうことだ」今度は鈴木があかりに近づいてくる。
「大丈夫です」あかりはにっこりと笑うと「先生には、全く関係のないことですから」と言った。
「あ、ああ。それなら良いんだ。松本も、早く泣きやめ」そう言って、鈴木は教卓に戻り「それでは、ホームルームの続きを始める」と、そのまま本当に続きを始めてしまった。
それでも、玲奈はずっと泣いているままだったが、誰も何も言わなかった。
ミサでさえも、言葉を失って、呆然とした表情であかりのことを見つめていた。

その日は、あかりに対するいじめが一切なくなった。
朝の一件を知らない他のクラスの生徒たちは、相変わらず何か言ってきたが、噂が広まったのか、すぐにそれもなくなった。
あかりは、いじめに立ち向かうには、誰かに頼らずに、自分一人で行動するのが一番だ、と思った。
自分があそこまで反撃出来るとは、考えてもみなかったが、いざやってみると、気分がすっきりとした。
そもそも、転校してから内気気味になっていたのだが、本来の自分は気が強いのだ。
これからも、徹底して立ち向かってやる。私は、いじめには絶対に負けない。あかりはそう決意した。

その日の放課後、体育館の倉庫の中という、定番の場所で、ある男女二人がこっそりと話をしていた。
しかし、それは決して二人が恋人同士というわけではなく、男の一方的な愛情による関係だった。
「調子に乗りやがって・・・私、超気分最悪。あの女のコト、絶対に許せない!!」女の方が、猛烈に怒っている。
「そうだよね。俺も許せないよ」男が、女の機嫌を取るように言った。
「それじゃぁ~、私のお願い、聞いてくれるぅ?」そう言って、女は上目遣いに男のことを見た。
「もちろんだよ。君のためなら、俺はなんだってする」男は、デレデレとしながら言った。

「ありがとう。それなら、あの女のこと、めちゃくちゃにしてやって」そう言って、女は中学生にはとても見えない、妖艶な笑みを浮かべた。
編集 / 2012.06.06 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
その他 【いじめ劇台本(仮)】
カテゴリ: 【その他】 / テーマ: 文学・小説 / ジャンル: 小説・文学
まだ十代のころに書いたいじめの劇の台本です。
特に演じてもらえる機会もなく、ブログを作成する度に公開するぐらいしか使い道はありません(^^;
今もそうですが、青臭い文章で非常に恥ずかしいです。

↓長いので追記からお読みください↓


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編集 / 2012.06.06 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第十話 【解けない誤解】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
「教室に戻ってこないから、心配になって呼びにきちゃった☆」ミサの明るい声が、トイレの中に響く。
「汚い人は汚いところにいるかな、って思ったけど・・・やっぱり、こんなところにいたんだね」そう言ってから、何が面白いのか、ミサはケラケラと笑い声を立てた。
「ほら、隠れてないで早く出てきなよ。あんたがいないって鈴木が知ったら、私にしつこく聞いてくるだろうから」ドンドン、と、ミサがあかりの入っているトイレの個室のドアを叩く。
あかりは、恐怖で足ががくがくと震えて、立っていられなくなり、汚いと知りながらも、おもわずその場にへたりこんでしまった。

「ミサちゃん、聞いて」それでも、あかりは言った。
「んー?何を?」相変わらずドアを叩きながら、ミサが答える。
「私、玲奈ちゃんの彼氏と、エッチなんてしてない。全部、誤解なんだよ」このタイミングを逃せば、永遠に言えなくなってしまうかもしれない。そう思ったからこそ、あかりは今、おもいきってそう言った。
「ああ」たるそうにミサが言って、一旦ドアを叩くことをやめた。
分かってくれたのだろうか。そうあかりが思っていると、上から、使用済みの生理ナプキンなどの、ゴミが降ってきた。
「私、嘘つきって一番嫌いなんだよね。だから、あんたのこと、大嫌い」そう言って、ミサはドアをおもいっきり蹴り飛ばすと「死ね!」と昨日のように言ってから、去っていった。

ゴミに囲まれながら、あかりは呆然としていた。
自分は、ミサに完全に信じてもらっていない。それはもうとっくに分かっていたことだったが、真実を伝えても、聞く耳すら持ってもらえないのだ。
あんなに仲が良かったのに。それは、全て偽りだったというのだろうか。
あかりは、玲奈がした嘘泣きとは違い、楽しかった日々を思い出しながら、号泣した。

泣きはらした目で教室に戻るなり、鈴木が声をかけてきた。
「どうしたんだ、大川。なんだか今日は元気がないぞ」それに対し、大丈夫です、とかなんとか、適当に答えて受け流そうとすると、鈴木はしつこく「何かあったら、先生に言いなさい」と言ってきて、あかりの肩を、ぽん、と叩いた。
その鈴木の態度を、あかりはおもわず、気持ち悪いと思ってしまった。
あかり自身が学校の皆に気持ち悪いと言われているというときに、おかしな話ではあるのだが、それだけ鈴木の態度は不信感を抱かせた。
今まで、私をはじめ、あれだけ生徒たちに対して無関心だったのに・・・あかりは、鈴木の態度に何か裏があるような気がした。

その日は、極力他人のことを気にせず、家に帰るときも裏道を隠れて走ったことで、なんとか自分に対するいじめを悪化させずにすんだ。
相変わらず、一番の問題といえば、出会い系からのメールである。どうやらミサが次々にサイトへあかりのことを登録していっているようで、メールの件数は増えていくばかりだった。
あかりは携帯を開いて、おもわず「げっ、三百件も来てる・・・」と口にした。
学校でもこっそりとメールを確認していたのに、もう既にこれだけメールが届いているとなると、もはや個別に対応していくことは不可能だ。

とりあえず、あかりはアドレスを変えることにした。
ミサたちにはもちろん、学校の生徒には教えず、新しいアドレスのことは、前の学校の友達と、母親だけに教えることにしよう、そう思った。しかしそこで、あかりは高橋の存在を思い出した。
一応、今週の日曜日に遊ぶ約束をしているが、一体どうすれば良いのだろうか。
今はとても、学校の人間と遊ぶ気分にはなれなかった。
それでもなぜか、気がつけば、高橋にアドレス変更のメールを送っていた。

アドレスを変更したことで、一旦メール攻撃は収まった。
しかし、今度はすぐに、電話の方がガンガンかかってくるようになってしまった。
出会い系経由の電話の合間に『逃げようとしても、無駄だから』といったミサからの留守電が、いくつも入ってくる。
あかりは、ミサのアドレスを消して、アドレス登録外着信拒否に携帯の設定を直した。
これのおかげで、着信履歴は残ってしまうものの、出会い系の連中と、ミサからの直接の言葉は聞かずにすむようになった。
まだまだ全然問題は解決していないものの、あかりは、ストレスの原因が一つ減ったことに喜びを感じた。

あかりが一息ついたとき”ファイト!”の着うたが流れた。
携帯を開くと『アドレス変更の件、了解です。来週の日曜日は、何時にどこで待ち合わせにしますか?』それは、高橋からのメールだった。
慌しい中、高橋と一緒に遊ぶという話は進んでいたのだ。
『お任せします。楽しみにしてるね』そう返信すると、あかりは、疲れのせいで、まだ7時にもならないうちに眠りについた。
編集 / 2012.06.06 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第九話 【いじめられっことして】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりは結局、出会い系の自分の個人情報を削除することが出来なかった。
登録されたのは悪質サイトばかりで、サポートセンターに問い合わせても『そういったことは、お客様の自己責任に任せておりますので』と返信が来れば良い方で、大抵は、余計に迷惑メールが増えるだけだった。
画像もさることながら、住所が掲載されていることは、あまりにも心配だ。ましてや、あの内容では・・・。
最愛の母親に危害が及んでしまうことを、あかりは最も恐れた。
警察に相談してみようか。でも、この程度のことで相談しても良いのだろうか。

頭の中が爆発しそうになりながら、自分の部屋から出ると、テーブルには既にご飯が用意されていた。
『今日も元気に学校に行ってきてね。お母さんより』という手紙も添えられていた。
あかりは、それを読んで、また泣きそうになった。元気になんて、行けないよ・・・そう考えながらも、時間は過ぎていく。
全く食欲がなかったので、せっかく用意してくれた母親に申し訳ないと思いながらも、あかりは朝食を生ゴミ用のゴミ箱に捨てた。

学校に行く途中にも、こそこそと何かを話していたり「ヤリマン!」と言ってくる生徒たちがいた。
予想はしていたものの、とても辛かった。おもわず、足が重くなる。
それでもなんとか、学校の前まで着くと、2年C組の窓から「ヤリマン、死ねー!!」と、男子の誰かの大絶叫が聞こえてきた。
続けて「キモいー!!」と、また別の男子が叫んでいる。
あかりは、このまま学校へ入らず、帰ってしまおうかと思ったが、それでは負けのような気がして、無理に体を学校へと入らせた。

下駄箱を見ると、上履きがなくなっていた。
なんという、昔からの定番のいじめ方法を使ってくるんだろう。
やったのが誰なのかは分からないが、もう、上履きが戻ってくることはないだろう。
上履きを母親に買わせてしまう負担、そして言い訳を考えると、あかりはますます気分が落ち込んだ。
一応、教室に入る前に担任の鈴木に「上履きがなくなっているので、スリッパを貸してください」と言いにいった。
「誰か、間違えて履いていったのかなぁ」とぼけた調子で、鈴木が言う。
そんな鈴木の態度にあかりはイライラとしたが、とりあえず、スリッパが入手出来たので、裸足で学校を歩くことだけは避けられた。

教室に入ると、当然のことながら「ヤリマンちゃん、昨日は何人とえっちしてきたの~?」という、とある男子の暴言で出迎えられた。
それを見て、女子はくすくすと笑うだけだが、男子の方は、露骨に次々とからかってくる。
その中でも、山田 翔平はしつこかった。あかりの周囲をくるくると歩き「ヤリマン~、ヤリマン~」と言ってくる。
山田は学校の誰もが馬鹿にする存在で、はっきり言って、あかりも馬鹿にしていた。
確か、山田は玲奈のことが好きだが、全く相手にされていなかったはずだ。
そのこともあって、余計にからかってくるのかもしれない。もしかしたら、玲奈にけしかけられている可能性もある。
案の定、玲奈が「おはよー☆あれぇ、山田とヤリマン、お似合いだねぇ」と言いながら、教室に入ってきた。
それを聞いて、山田がニタニタと笑う。どんな理由でも、好きな人に構ってもらえるだけで、嬉しいのだろうか。
「やだぁ~、山田超キモい!」玲奈はそう言って、あかりのすぐ横を通ると、さっさと自分の席に座ってしまった。
あかりの現状は、自分とは全く関係ありません、というふうに、涼しい顔をしている。
それを見て、あかりは玲奈に殴りかかりたくなったが、なんとか我慢した。
ここでそんなことをしてしまったら、ますます自分に対する風当たりが強くなるだけに違いない。
それなら、しばらくの間はひたすら我慢して、いじめが収まったら、いつかまた、ミサと仲良くなれる日が来るはず・・・そんな甘い考えを、あかりはまだ持っていた。
その後、ミサも楓も教室に入ってきたが、二人であかりの方を見ながら、ずっとくすくすと笑っていた。

「え~、大川の上履きを誰かが履き間違えているようなんだが、誰か、心当たりないか?」ホームルームにて、鈴木がそう言った。
しまった、この件を口止めしておくことを忘れた、と、あかりは自分の失敗を嘆いた。
第一、普段は全く生徒に関心がない癖に、なぜこういったときだけでしゃばってくるのだろう。
おまけに、言っていることがとんちんかんときている。
「センセー、大川さんは人気者だから、誰かがとってっちゃったんだと思います!!」山田がはしゃぎながら言った。
鈴木にも山田にも、あかりがうんざりしていると、ミサが「友達の私たちが、一緒に探しますから、先生は心配しなくて大丈夫ですよ」と、優等生らしい口調でにこやかに話した。
「そうか。なら大丈夫だな。良かったな、大川」そう言って、鈴木はさっさとこの話題を終了させた。
「まぁ、あんたの上履き捨てたの、私と楓なんだけどね」ミサが、あかりにそっと耳打ちした。

いじめを受けていると、様々な面で不便なことを、あかりはほんの数時間で十分に思い知らされた。
顔を見てこそこそと言われたり、はっきりと暴言を吐かれたりするのはもちろん、体育では、誰もペアを組んでくれる生徒がいなかった。
「あれ?大川、どうしたんだ?」体育教師でもある鈴木が、いまだに一人でいるあかりに問いかける。
「あっ、大川さんなら私と・・・」ミサがそう言いかけた瞬間、高橋が「私が大川さんと組みます」と言った。
それを聞いたミサが、チッ、っと、鈴木には聞こえないように舌打ちをした。
「ありがとう」思いがけない助けに、あかりは高橋に、心から感謝した。
「いえ、私もいつも組む相手がいないので」高橋は、そっけなく言った。

意外と辛いのが、給食の時間だった。給食当番が、誰もあかりの席に給食を配ってくれないのだ。
おまけに、ミサをはじめ、席の近い生徒たちにおもいっきり間を離された。
そして「大川とかいう奴、マジでキモいよな」「出会い系やってるらしいよぉ。ヤリマンなんだねぇ」という、楓と玲奈のやりとりが聞こえてくる。
隣の席のミサにいたっては「さっさと、母親と一緒に無理矢理やられちゃえば良いのに」とあかりに向かって言ってくる。
やっぱり、あれはミサの仕業だったのか・・・分かってはいたものの、あかりは改めてショックを受けた。
他の生徒たちも似たような話をしており、ある意味、教室中があかりの話題で持ちきりだった。

あかりは、今日はまだ何も食べていないのに、吐き気がこみ上げてきた。
おもわず席を立ち、急いで教室から出る。また暴言を言われたような気がするが、もはや何も聞こえなかった。
体育のときに飲んだ水と、胃液をあらかた吐いてみると、あかりは少しだけ気持ちが落ち着いた。
はぁ、と言って、座り込もうとしたが、そこは、汚い方のトイレであることに、ようやく気がついた。
誰も使わない、誰にも必要とされていない、汚いトイレ。
まるで、今の私みたいだな、とあかりは思った。
そう思うと、なんだかこのトイレが自分の一番の居場所のように思えてくる。

そのとき突然「あ~かりん♪」と、ミサの明るい声が聞こえてきて、あかりは、心臓が飛び出るかと思った。
編集 / 2012.06.06 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第八話 【メール攻撃】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりは、悪夢にうなされていた。
それは、ミサをはじめとした三人が、あかりを囲んで、責め立ててきているというものだった。
「信じらんない」「サイッテー!!」「友達だと思ってたのに」「ヤリマン・・・」
そう一方的に三人に責められていると、ミサが寂しそうな笑みを浮かべて、あかりに背を向けた。

「待って、ミサちゃん!」そう言って、あかりは飛び起きた。
良かった、夢だったのか・・・と思ってから、現実はもっと酷いことに気がついた。
大好きなミサに死ねと言われ、突き飛ばされたところまでは覚えているのだが、その後の記憶がない。
どうやら、あかりは保健室で寝かされていたようだった。

「あら、起きたの?」保健室の先生が、ベットのカーテンを開ける。
「どう、頭は痛む?」と聞かれたのだが、頭はそれほど痛くなかったので「いいえ」とあかりは答えた。
むしろ、楓に殴られた頬の方が、よっぽど痛かったし、第一、今は体の痛みどころではなかった。
「脳内出血の可能性も絶対にないとはいえないから、念のために今日は早退して、病院に行っておいた方が良いわ。お母さんは、家にいらっしゃる?」それに対してあかりは「いいえ」とまた答えた。
あかりの母親は、生活のためにほとんど毎日、朝から夜まで休みなく働いているので、当然、あかりが学校にいる時間帯に家にいるわけもなかった。

「そうなの。それなら、先生が病院までついていった方が良いかしらね・・・」そう先生が言った途端に「先生!大川さんのことなら大丈夫です。私たちがついてますから」と、ミサたち三人がひょっこりと顔を出した。
あかりは、おもわず悲鳴をあげそうになった。
「あなたたち、友達思いなのは良いけど、早退したいだけなんじゃない?」先生が笑いながら三人に言う。
「だってぇ~、あかりちゃんがふらふらしてるなぁ、って思ってたら、突然教室のドアに向かって、後ろから倒れたんだもん。びっくりしたよぉ」玲奈が、もはや完全に演技と分かる調子でそう言った。
なるほど、この一件は、そういう話になっているのか、と、あかりはもはやさほど驚くこともなく受け入れた。
「病院は一人で行けますから。大丈夫です」あかりは、そう言ってベットから降りた。
「本当に大丈夫?私たちがついていってあげるのに」ミサたち三人が笑っている。
その笑顔は、不気味な、悪魔の笑顔にしか見えないようになっていた。

「さすが大病院。これほど時間がかかるとは・・・」自宅のベットに寝転がりながら、あかりはそうぼやいた。
念のために、精密検査をしておいた方が良いということで、自宅からは数駅かかる大病院を先生に紹介されたのだが、散々待たされるわ、精密検査をされるわで、たっぷり三時間は時間がかかったのだ。
おまけに、違う意味で言った「頭が痛い」という発言を「それは大変だ!」ということで、医者によって、なぜか点滴まで打たれてしまった。
ここまでやって、結局は異常なしということで、なんだかかえって疲れが増しただけだったが、学校から逃げ出せたことは、今のあかりにとっては不幸中の幸いだった。

『明日からの学校・・・どうしよう・・・』考えれば考えるほど、落ち込んでいく。
玲奈はまだしも、ミサと楓が豹変してしまったことは、とても辛いことだった。
おまけに、クラス中の生徒たちを敵に回してしまったのだ。
明日からの学校生活が、どんなに酷いものになるか、容易に想像がついた。

そのとき、例によって”ファイト!”の着うたが鳴り響いた。
ミサたちからだったら嫌だな、と思いながら、のろのろとあかりは携帯を開く。
『タダでやらせてくれるんだって?セフレになりませんか』
『この顔で割り切り二万じゃ高いよ(笑)。一万にしてくんない?』
『中学生でそんなプレーに興味があるなんて、今の時代は怖いね~。ほんとにこの住所で間違いないの?』
そんなメールが、次々に受信ボックスに入ってくる。
あかりは、パニック状態になった。まさか、これもミサたちの仕業なのだろうか。

その中に一通、見知った名前からのメールがあった。
『今日は嘘ついちゃってごめんなさい。詳しくは分からないですけど、私のせいで、こんなことになってしまったんですよね・・・?今週日曜日に遊んで、そのときにゆっくりお話しましょう』それは、高橋だった。
ミサたちの態度がショックですっかり忘れていたが、そういえば、高橋も、あかりとメールしていることを否定したのだ。
とはいえ、あの場では、誰もがおもわず否定してしまったに違いない。
あかりは、クラスの中で唯一味方になってくれるであろう、高橋の存在を、大切にしたいなと思った。

あかりはその日の夜、自分が登録されている出会い系を突き止めたりすることで大忙しだった。
あかりの画像と実名と共に『タダで大丈夫です☆やり目大歓迎』『割り切り希望。二万でお願いします』などという書き込みが見つかった。
そんな中、一番ショックだったのは、あかりの住所と共に『無理矢理押しかけてきてください。そんなプレーに憧れる中学生です』という書き込みを見つけたことだった。
万が一、本当に押しかけてこられてしまったら・・・あかりは、おもわず涙が溢れてきた。
涙が出たのは、これを書い人物が、きっとミサであることが分かったからでもあった。
今の学校の生徒の中で、あかりの家を知っているのは、ミサぐらいだったのだ。

あかりは、その夜、一睡もすることが出来なかった。
編集 / 2012.06.05 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第七話 【仕組まれた罠】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
状況が全く飲み込めずに、あかりが固まっていると「出たよ、ヤリマン」そんな言葉が、教室のどこからか聞こえてきた。
「ミサちゃん・・・」そう言ってあかりが三人の方に近づこうとすると、玲奈がよりいっそう大きな声で泣き出す。
「まさか、あかりんがそんな子だとは思わなかったわ」ミサが、転校初日に見せたあの冷たい瞳で、あかりのことを見る。
「あかり、てめぇ最低だな!!生きてて恥ずかしくねーのかよ!!」そう言って、楓があかりを睨みつける。
あかりは、頭が真っ白になるとは、こういうことを示すのか、と思った。
訳が分からない。ただ、自分が玲奈によって、悪者にされているということだけは間違いなかった。

「あーあ、あかりんは真面目な子だと思ってたのにな」ミサが、あかりの目の前に来て、相変わらず冷たい瞳であかりのことを見つめた。
「せめて、自分から言えば?玲奈に、ごめんなさいって。まあ、謝ってすむ問題でもないだろうけど・・・」そう言って、ミサは、どことなく寂しそうに笑った。
「分からない」あかりは、そう言うのが精一杯だった。「はぁ?」と楓に返される。
「分からないよ、私、玲奈ちゃんに何もしてない・・・」そのとき、クラス中の視線が、あかりに集中した。
とても冷たい、ミサと同じような瞳を、誰もがしているようだった。

「てめぇ」楓も、飛び掛らんばかりの勢いであかりに近づいてくる。「ほんとに、何も知らない、って言うのかよ」
「うん」そう答えた瞬間、あかりは頬に鈍く、重い痛みを感じた。
それが、楓に殴りつけられたのだと分かるには、少し時間がかかった。
「嘘つきはドロボーの始まり、って、本当なんだね」ミサが、相変わらずなんとも言えないような笑い方をしている。
「これ見ても、しらばっくれていられる?」痛む頬を押さえながら、ミサが差し出した玲奈の携帯のメール画面を見て、あかりは言葉を失った。

『玲奈ゴメンあかりちゃんとえっちしちゃった
うわーん、と大声で泣きながら、ちらっとあかりの方を見て、玲奈が、にやり、と笑った。
あかりは、気絶出来るものならば気絶したい、と心から願った。
身に覚えがないどころか、これは、玲奈の悪意によって、仕組まれた罠ではないか。

「これ、祐介さんの・・・?」そう言ってから、あかりは、しまった、と思った。
案の定、それはミサと楓の怒りを加熱させることになった。
「ほら、やっぱり分かってんじゃねーか!!」またもあかりを殴ろうとする楓を、ミサが止める。
「やめときなよ、楓。こんな奴に触れたら、ヤリマン菌が移っちゃう」ミサが、汚いものを見るような目で、あかりのことを見た。
「皆、分かった?今度から、こいつのあだ名、ヤリマンね」クラス全体のことを見回して、ミサが言う。
早速「その顔でヤリマンかよ」「キモいんだけど・・・」「俺にもやらせて!」と、数々の暴言が、クラスメートの口から、あかりに飛び出す。

「違うよ、これは、高橋とメールしてることを黙ってもらってたから、それで」もはや、立っていることすらやっとの中、あかりはなんとかそう口に出した。
「はぁ?意味わかんねぇ」楓がそう言うと「リスキモ、ヤリマンとメールしてんのか?」と、高橋に向き直って、そう聞いた。
「・・・してません」少し間を置いてから、高橋がはっきりと答えた。
「てめぇ、ほんとに嘘つきだな」楓が少し、あかりから離れて、吐く真似をしながら「ってことは、マジで玲奈のカレシとやったんだな。きっしょ!」と言った。

「私、そんなことしてない。ミサちゃん、信じて」ミサにすがりつくように、あかりは言う。
もはや、他の誰に嫌われても良かった。大好きなミサさえ、分かってくれれば。
しかし、現実は残酷だった。

「死ね、ヤリマン!」そう言いながら、ミサはあかりを突き飛ばし、あかりは、本当に気絶した。
編集 / 2012.06.05 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第六話 【敵に回してはいけない相手】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
『そうなんだあかりちゃんはなんの食べ物が好きなの?俺は中華かな今度、一緒に行こうよ
はあ、と、もう梅雨入りした六月のある日、自分の部屋でそのメールを開いて、あかりはため息をついた。
「秘密にしてもらうからって、こんな人とメールしてたくないよ・・・」独り言が口をつく。

玲奈の出した条件とは、こんなものだった。
「あかりちゃん、玲奈のカレシとメールして。今、アドレス赤外線で送るから」言うが早いが、玲奈はあかりに携帯を向けてきた。
「えっ、なんで?」あかりが戸惑うと、玲奈は「だって、玲奈のカレシ、他にも女が沢山いるみたいなんだもん!」と怒りながら答える。
理由になっていない理由に、更に戸惑っていると「良いから早く。ケータイ出して」そう催促されたので、あかりはしぶしぶ玲奈のカレシこと、外岡 祐介のアドレスを受け取った。
「玲奈からカレシには伝えておくから、毎日ちゃんとメールしてね」そう言って、さっさと玲奈は一人で歩き出し「たっだいまー!!」と、カラオケの一室のドアを開けた。
まだ、楓が「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー!!」と一人で歌っていたので、その声はかき消されてしまったが。

そんなわけで、仕方なく祐介とメールを毎日しているのだが、この祐介、とにかく軽いのだ。
あかりが玲奈の友達であることは当然知っているのに、平気でしつこくデートに誘ってくる。
玲奈の思惑は分からないが、とりあえずひたすらその誘いを断り続けるしかなかった。
『私は和食が好きなので、合わないですね玲奈がいるんだし、玲奈と行ってください』いつも通り、玲奈の存在を立てたメールを返す。

そのとき、またメールを受信した。誰かな、と思って開くと、高橋からだった。
『もし良かったら、今度遊びに行きませんか?このあたりだと誰かに見つかっちゃうかもしれないから、アキバとかで』アキバって・・・と思いながらも、あかりは自然と指が動いていた。
『良いよ学校では話が出来ないぶん、色々と話そう』それは、OKの返事だった。

次の日、あかりが学校に着いて、上履きに履き替えていると、玲奈に話しかけられた。
「おはよーあかりちゃん☆最近、うちの馬鹿カレシはどう?」にこにこと笑いかけながらも、返事を一歩間違えたら、どうなるか分からない。そんな雰囲気を、玲奈は漂わせている。
「大丈夫だよ。ちゃんと玲奈ちゃんひとすじにしておけ、って毎回言ってるから」何が大丈夫なのかは自分でも良く分からなかったが、あかりはそう答えた。
「ふぅん」そう言ってから、玲奈は「あかりちゃんって、結構テキト~だよねぇ」玲奈は、ふふ、と目を伏せて笑った。
その態度にぞっとする以上に、腹が立ってしまったので「そんな言い方、ないんじゃない?そもそも、玲奈ちゃんがメールして、っていうから、仕方なくメールしてるのに」と、おもわずあかりは言ってしまった。
まずい、と思った瞬間、玲奈が見る見るうちに顔を真っ赤にさせた。
「あかりちゃん、サイテー。どうなるか、玲奈、もう知らない!」そう言って、玲奈は走り去ってしまった。

ああ・・・やってしまった・・・とあかりが頭を抱えていると、ミサがやってきた。
「あかりんおはよう♪あれっ、どうかしたの?」ミサが心配そうにあかりの顔を覗き込む。
「大丈夫、大丈夫」と、あまり大丈夫ではないのだが、またも大丈夫とあかりは言った。
「本当に大丈夫?顔、真っ青だよ。保健室、一緒に行ってあげようか?」玲奈とは正反対に、自分の顔は真っ青なのか、とあかりはぼんやりと思った。
「トイレ行けば、大丈夫・・・」とりあえず、一人になりたかったので、あかりはトイレに行くことにした。
いつも連れションをしているので、ミサがついてこようとしたが、なんとかそれを振り切った。

『どうしよう、玲奈ちゃんのことを怒らせちゃったから、高橋のこと、ミサちゃんと楓ちゃんに言われちゃうよ』そう考えて、絶望的な気持ちになる。
でも、これは本来、おかしな話なのだ。なぜ、高橋と仲良くしているということで、玲奈に弱味を握られたような気持ちになっているのだろう。
おまけに、言いなりになって、人の彼氏としたくないメールまでして・・・我ながら、情けない。
堂々としていれば、案外大丈夫なのではないか。優しいミサちゃんのことだ。きっと分かってくれるに違いない。
それに、ミサちゃんが分かってくれれば、楓ちゃんもそれについてきてくれる。
前向きに考えていると、あかりは、徐々に元気を取り戻していった。
そうだ。おもいきって、高橋とメールしているということを、自分から言ってみよう。
そう決意して、あかりはトイレから出た。
そのトイレは、これからの学校生活を暗示するかのように、汚い方のトイレだった。

教室に入ると、何か空気がおかしいことに、あかりはすぐに気がついた。
なんだか、皆が一斉に自分の方を見ているような気がする。
どうかしたの、と、ミサに聞こうとする前に、原因は分かった。

玲奈が、あかりのことを指差しながら、号泣していたのだ。
編集 / 2012.06.05 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
ショートショート 【ある青年の死】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
あるひとりぼっちの青年が

自殺することにしました

青年には

遺書を書く相手も

いませんでした


『あっ、でも昔、僕の詩をほめてくれた先生がいたじゃないか』

青年は

その先生に

詩を書いた手紙を送ってから

死にました


それを読んだ先生は

「なんだこのイタズラは。気味が悪い」

と言って

破り捨ててしまいました


青年の死は

ありふれた自殺として

新聞にも載らず


灰になっただけでした


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編集 / 2012.06.05 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第五話 【リスキモとメル友】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー!!ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー!!」
ある週の日曜日、例の三人と一緒にカラオケに行き、楓が一人で盛り上がっている中、あかりは高橋とした会話を思い出していた。

「そうだけど」突然高橋に名前を聞かれたあかりは、そう素っ気なく返すことしか出来なかった。
「私、高橋 莉子です。よろしくお願いします」高橋が、丁寧に言う。
「それは知ってるけど・・・何か用?」我ながら酷い態度だな、とあかりは思った。
高橋と二人で一緒にいるところを、誰かに見られたくなかったのだ。
「特別に用があるっていうわけじゃないんですけど。お話したことないな~、って。」意外とはきはきと喋る高橋を見て、あかりはあっけにとられた。
「あ、学校とは違う、って思ったんじゃないですか?学校だと、話しにくいから。外の方が、自分らしくいられるんです」そう言って、高橋は複雑な笑みを浮かべた。
そのとき、同学年の男子たちが高橋のことを見て、こそこそと話していることにあかりは気がついた。
「まあ、この通り、外でもあまり落ち着けないんですけどね」高橋もそれには気がついているようで、自嘲気味に笑う。
あかりは、ますます一刻も早く家に帰りたくなった。これ以上高橋と一緒にいては、自分まで何を噂されるか分からない。
ましてや、ミサたち三人に、このことが知られてしまったら・・・。
ぞっとする思いで「学校、お疲れさま!じゃあね!」そう言って、あかりはダッシュでその場から逃げ去ろうとした。
「待って!」そう大きな声で高橋に言われたので、おもわず振り返る。
「お話してくれて、ありがとう」今度は、本当に嬉しそうな笑顔で、高橋が言った。

「あかり、ノリ悪いぜ!次は気分上々↑↑一緒に歌うぞ!!」楓のその言葉に、あかりは我に返った。
「あかりん、君かわぅいーね☆」今流行りのチャラ男芸人の真似を、ミサがする。
あかりは、あはは、と適当に二人に対応して「ごめん、ちょっとトイレ」と言って、席を外した。

トイレに入るなり、携帯を開く。新着メールが一件。
『今日は図書館にいます。犯罪心理学の本が新しく入りました』それは、高橋からのメールだった。
実は、あかりは高橋とアドレス交換をしていた。ほんの少し、会話とはいえない会話をしただけなのに、それだけで純粋に喜んでくれた高橋のことを、どうしても突き放せなかったのだ。
だから「学校で話すとかは無理だけど、メールなら良いから」と、随分と上から目線ながらも、そうおもわず口にしたのだ。
高橋は、子供のようにキャッキャと喜んで「携帯買ってから、初めてのメル友です」と言ってくれた。

メールのやり取りをしていくうちに、高橋が読書が趣味なことと、そして、自分と同じで、両親が離婚しており、高橋は父子家庭であることを、あかりは知った。そのことを知ってから、あかりは高橋に親近感を抱いた。
『図書館、本当に好きなんだねっていうか、前から思ってたんだけど、犯罪心理学の本って何?』そう返信する。
いつもこんな調子で、話が合うわけではなかったが、今までの友達や、ミサたちとは違うものを、あかりは高橋に対して感じていた。

そこに、玲奈が入ってきた。
「あかりちゃん、超遅い~。誰とメールしてるのぉ?カレシ?」そう言って、玲奈が携帯を覗き込もうとしてくる。
「ううん!ただの友達だよ」あかりは慌てて携帯を閉じた。
「ふぅん。なんだか怪しいなぁ~。まぁ、どうでもいっか」玲奈はすぐに、あかりを放って化粧直しを始めた。
あかりはほっとした。高橋とメールしていることがミサたち三人に知られてしまったら、大変なことになってしまうのは、目に見えている。

そのとき”ファイト!”の着うたが鳴り響いた。カラオケの店内がうるさかったので、マナーモードにしていなかったのだ。
「今度こそ、カレシでしょぉ~?」玲奈が近づいてくる。「最近、あかりちゃん、良く誰かとメールしてるよね。怪しくないなら玲奈にも見せてよ!」そう言った玲奈は、いつものおっとりとした雰囲気をなくし、本性の腹黒さが現れていた。
「別に、見ても良いけど・・・」そう言いながら、あかりは動揺を隠すことに精一杯だった。
「そう?じゃあ見せて」玲奈が手を突き出してくる。「分かった」そう言って、あかりは玲奈に携帯を開いて見せる。
高橋からのメールではありませんように、高橋からのメールではありませんようにと、あかりは祈った。

『あかりん、早く戻ってきなさい』それは、ミサからのメールだった。
「なーんだぁ。つまんないの。じゃあ、一緒にもどろっか」玲奈があかりの手を引く。あかりは、心からほっとした。
「あっ、でも」玲奈が部屋に向かう途中で突然、足を止めた。
「あかりちゃんが本当に怪しいのは・・・男とじゃないよね。例えば、リスキモ、とか」
あかりは、その発言を聞いて、全身が凍りついた。

「玲奈、男子たちから聞いたんだよね。あかりちゃんが、リスキモと話してたって」
玲奈が、何を考えているのか分からない、不気味な表情と声で言う。
「アドレスも交換してたんだって?玲奈たちの知らないうちに、すっごく仲良しさんになったんだねぇ」
そう言って、玲奈はあかりの肩を叩くと「でも、大丈夫。ミサちゃんたちには、秘密にしておいてあげるから。でもその代わり、玲奈のお願い、聞いて?」

玲奈は、にやりと笑った。
編集 / 2012.06.04 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第四話 【楽しい学校生活】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
ミサたち三人と遊んだ日曜日は、最高の一日となった。
四人で電車に乗った後、家の方向がミサと一緒だったので、あかりはミサと二人っきりで帰ることになった。
「今日は、あかりんと遊べたのが一番嬉しかったよ」ミサは、笑顔でそう言ってくれた。
「私も、ミサちゃんと遊べたことが一番嬉しい」あかりは、おもわずそう答えていた。
それは、飾りのない本音だった。あかりは、いつの間にかミサのことを大好きになっていたのだ。

次の日からはまた学校生活が始まり、日を重ねる毎に、あかりは毎日がどんどん楽しくなっていった。
”ヨンコイチ”として、ミサ、玲奈、楓、そしてあかりで、四人で一緒にいるのがいつもの学校生活となっていった。
しかし、良いことばかりではなかった。ミサたち三人は、いじめをしていたのだ。
ターゲットは主に”リスキモ”こと、高橋 莉子で、三人はそれを心底楽しんでいるようであった。
あかりは、それを嫌だと思いつつも、せっかくの友達を失いたくなくて、何も言うことが出来なかった。

「なんかさ~、このへん臭くねえ?」ある日の朝、楓が、笑いながらそう言う。
「ねぇ~。なんだか、ゴミの臭いがするよねぇ」玲奈がそう返す。
それは、高橋に向けられた発言であることは明らかで、そんなやり取りを、三人は毎日繰り返していた。
「あかりんも、そう思うでしょ?」ミサが、あかりに対して問いかけてくる。
あかりは、どう返せば良いのか分からなくて、いつも曖昧に微笑むだけだった。

「ねぇ、あかりちゃんも、リスキモにキモいって言っちゃいなよぉ。いつも遠慮してばっかじゃん」玲奈が、意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
戸惑いながら「逆恨みされたら嫌だから・・・」と、あかりは玲奈に答えた。玲奈は、どうも腹黒いところがあるようだ、とあかりは思うようになっていた。
「ふぅん」と、それほど興味がなさそうに玲奈は言って「そういえばぁ、玲奈のカレシ、えっちさせてあげないと、玲奈に怒るの。どうしたら良いかなぁ?」と三人に聞いた。
「そんなの知るかよ。バーカ。あー、煙草吸いてぇ」そう言って、楓は煙草を吸う仕草をした。
恋愛経験のないあかりは、どう答えれば良いのか困っていると、そのとき、なぜかミサの顔がこわばっていることに気がついた。
「ミサちゃん、どうかしたの?」そう聞くあかりに「え?あ、玲奈がウザいな、って」と返すミサ。
「皆、ひどぉ~い!!」玲奈が、わざとアヒル口をしながらそう言って、全員が笑った。

その日は、珍しくあかり一人で帰ることになった。
ミサたち三人はバスケ部で、あかりは帰宅部だったので、元々帰宅時間は合わないのだが、あかりは家庭の経済状況から、公立高校への進学を考えているため、毎日学校の図書室で自主勉強をしていた。
だから、三人が部活が終わったら、いつも一緒に帰っているのだ。
しかし、図書室が本棚整理でその日は使えなかったので、先に一人で帰ることにしたのだった。
一人で帰ると、やはり退屈で、三人の存在がどれだけ大きいか、思い知らされた。
やっぱり、なんだかんだで三人は最高の友達なんだ、と、そんなことを考えていると、あかりは、前方に見知った顔を見つけた。それは”リスキモ”・・・高橋だった。

正直言って、あかりは、げっ、と思った。
あかりが直接的にいじめを行っているわけではないにせよ、いつも一緒にいる友達がしているのだから、あかりも加害者と同じだ。
それに、三人の話を聞いているかぎり、高橋は確かに気持ち悪い存在だったし、何より、リスカをしている人間など、あかりは生理的に受け付けなかった。
高橋は、酷い猫背で、相変わらず暗い雰囲気を漂わせながら、のろのろと歩いている。
気づかれませんように、と、あかりはあまり音を立てないようにして歩いた。

「大川・・・あかりさん?」そう言って高橋が突然振り向いたので、あかりは、腰が抜けるかと思った。
編集 / 2012.06.03 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第三話 【今時の中学生】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりは、××中学校での生活に対して、日を重ねていく毎に徐々に慣れていった。
それは、ミサをはじめとした三人が、とても親切にしてくれるということが一番大きかった。
そして、嬉しいことに、あかりは転校してきてから初めての日曜日に、ミサたちから遊びに誘われた。
玲奈の好きな、なんとかシンゴという俳優が主演している映画をやっているので、それを観た後に、ファミレスで女子会をしようという話だった。

あかりが待ち合わせ場所のS駅の交番前に着くと、もう既にミサはそこにいた。
S駅という繁華街の中でも、ミサのファッションセンスと、抜群のスタイル、そして、綺麗な顔立ちは目立っていた。
化粧をしているようだったので、ミサは学校のときより大人っぽく見えて、女子大生でも十分に通用するのではないか、とさえあかりは思った。
「あかりん、会いたかった~!!」あかりを見るなり、そう言ってミサが抱きついてきたので、あかりは少し驚いた。ミサからは、香水なのか、とても良い香りがした。
ミサは色白でとても華奢で、自分が力をこめたら、折れてしまうのではないか、とあかりは思った。
その後すぐに、玲奈も楓もやってきたので、映画館に向かった。

「めちゃくちゃ良い話だったねぇ。玲奈、泣いちゃった」映画を見終わり、そう言った玲奈の顔には、確かに涙が浮かんでいた。
「っていうかぁ、あたしのシンゴ君、カッコ良かったな」今度は、目をキラキラさせながら玲奈が言う。
「お前のじゃねーし!!でも、シンゴって奴、確かにイケメンだったな」楓が、玲奈のことをどつきながらそう言った。
「うちの学校にも、あれぐらいイケメンがいれば良いのにね~」ミサが、背伸びをしながら言う。
「無理無理。だって、担任からして超ブサイクじゃん!!」楓の発言を聞いて、四人で大笑いした。

その後、Sという、学生の味方の安いファミレスに入って席に着いた早々「あかりんは、好きな男子とかいるの~?」と、あかりはミサにそう聞かれた。
「玲奈も、それ聞きたぁい。前のガッコとかで、いなかったの?」玲奈も、興味津々といった感じで身を乗り出してくる。
「特には・・・いなかったかな」それは本当だった。あかりは、あまり恋愛には関心を持たずに生きてきたのだ。
それは、幼いころから両親が不仲で、毎日のように喧嘩をする姿を見ていたことと関係があるのかもしれなかった。
「えーっ、信じらんなぁい!!玲奈、大学生のカレシがいるんだよ。これ、プリ画」そんなあかりの複雑な事情を吹き飛ばすかのように、玲奈は携帯の待ち受け画面を見せてきた。
髪を明るい茶髪に染めた、なかなかのイケメンと、いかにもラブラブ、といった感じで、玲奈が一緒に写っていた。ちょっと雰囲気が、なんとかシンゴに似ていなくもない。
「まーた始まったよ、玲奈のリア充自慢」楓のその発言に、またも四人で大笑いした。

そんな調子で色々と語っていると、楓が「あーもう我慢で出来ないわ。アタシ煙草吸いたいんだけど、良い?」そう聞きながら、さっさと煙草を取り出して、慣れた手つきでジッポで火をつけた。
「あっ、私にも一本ちょうだい」ミサが手を伸ばす。あい、と言って、楓がミサに煙草とジッポを渡した。
「あかりんも吸うー?」おいしそうに煙草を吸いながら、ミサがあかりにも煙草を手渡そうとしてきた。
「ちょっと、それアタシの煙草なんだから・・・まあ、別に良いけどな」楓がぶつぶつと言う。
あかりは、中学生なのに平気で煙草を吸う二人に引いてしまったが、玲奈の「ちょっとぉ、二人ともダメだよぉ。玲奈、煙草嫌い~」という発言で、救われた。
「はいはい、玲奈はおりこうさんだね~」煙草を揉み消しながら、ミサは玲奈の頭をなでなでした。
「玲奈、子供じゃないもん。この間、カレシとえっちしたしぃ」玲奈が不満そうに言う。
今度は、あかりは玲奈に対して引いてしまった。最近の中学生は、ここまで発展しているのか。
「ダメだよ、そういう話は。純粋なあかりんもいるんだから~」ミサが笑いながら、またあかりに抱きついてきた。
「あかりんのハートは、私のものっていう感じかな」ミサが上目遣いで、あかりのことを見る。
それを受けたあかりは、同性なのに、なんだかおもわずドキっとしてしまった。

「あーあ、馬鹿ばっかり」楓が、たるそうにそう言った。
編集 / 2012.06.02 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
ショートショート 【自殺嫌いな男】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
「また人身事故か」

男はそう言って、チッと舌を鳴らした。

自殺大国である日本では、人身事故は珍しくもなんともない。

男は会社員だ。だから、通勤中や帰宅中に、人身事故のせいで足止めをくらうことがしょっちゅうあった。

「死ぬなら人に迷惑をかけないような死に方をしろよ」

男は、自殺する人間が大嫌いだった。


~~

ある日男に、女の知人が、親戚の叔父のことに関して相談してきた。

男は、暗く悩んでいる人間は、自殺する人間の次に嫌いだったが、下心があったので、相談に乗った。

叔父は、訳があってお金に困っており、自殺するぐらいに悩んでいて、心配だと女は話した。

「死ぬ気になればなんでもできるだろ?その叔父さんが弱いだけの話だね」

男は、続けて言った。

「そんな金にルーズな奴なんか、死なせてやった方が良いんじゃない?」

女は、無言で男の元を去っていった。

男は、暗い人間と関わりが切れたので、別に良いと思った。


~~

それから数十年の歳月が過ぎ去った。

男は、気軽な気持ちで親族の連帯保証人になり、本人に逃げられ、莫大な借金を背負うことになった。

男は、誰にも何も相談せず、いや、相談する相手がいなかったので、迷わず電車にはね飛ばされた。


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編集 / 2012.06.02 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
第二話 【リスキモと呼ばれる少女】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
家に帰ってからも、あかりはミサの言った言葉が頭から離れなかった。
KYだったらやっていけない。それは、確かに学校という集団生活の中での暗黙の了解だろう。
それでも、そのことをわざわざ伝えてきたときのミサの冷たい瞳に、不気味な不安を感じていた。
夕飯を食べて、そんなことを考えていたら、メールの着うたが鳴り響いた。
あかりは、大好きな中島みゆきの”ファイト!”という歌を着うたにしている。
少し古い趣味かもしれないが、嫌なことがあると、あかりはこの歌を聴いて、昔からしょっちゅう励まされたものだ。

『あかりん、早速メールしてみたよん改めて、これからヨロシクね ミサ
ミサからのメールだった。すぐに返信をする。
『あかりです今日はありがとうこちらこそ、これからよろしくお願いします
気さくなメールの内容に、やっぱりミサは良い子なんだなとあかりは思った。
例の発言も、あかりのことを思って言ってくれたに違いないと、気持ちを切り替えることが出来た。
それから何通かやりとりをして、疲れもあって、その日あかりは、いつもより早く眠りについた。

次の日学校に行くと、早速ミサに話しかけられた。
「あかりんおはようー☆今日も一日、テキト~に頑張ろうね」
そう言ったミサの横に、おっとりした、天然そうな女子がいた。あかりのことを見て、にこにことしている。
昨日も話しかけてきてくれた気がしたが、あかりはその女子の名前を、すぐには思い出すことが出来なかった。
「あかりちゃん、玲奈だよ。あかりちゃん、玲奈のこと忘れてる~」
玲奈はぷっくりと頬を膨らませた。それを見て、あかりは玲奈のことを思い出し「ごめんごめん!玲奈ちゃん、おはよう」と言った。
「大丈夫だよ」と言ってから、玲奈は後ろの方を見て「ほらぁ、楓ちゃんもあかりちゃんに挨拶しなきゃ」と手招きした。
すると、少し不良っぽい女子が来て「あかり、おはよう」とぶっきらぼうに言った。

「これで全員揃ったね!うちらニコイチじゃなくてサンコイチだから、ヨロシク♪」と、ミサが機嫌良さそうに言う。
ニコイチってなんだっけ、とあかりは疑問に思ったが、それを口にする前に、楓が「今日さっきあそこでリスキモの奴に朝から会っちまったよ。マジキモい~」と笑いながら言った。
「楓ちゃんかわいそう。リスカ菌が移っちゃうねぇ」と、玲奈がおっとりとした口調で返す。
今度は、リスキモって誰、という疑問をあかりは持ったが、それを口にする前に、ミサに「高橋っていう、超キモい女子がうちのクラスにいるんだよね。そいつ、リスカしてるの。だから、リスキモってうちらは呼んでるんだ」と言われた。
「リスみたいで可愛いあだ名だけど、実際は暗くてブスで、超キモいんだぁ」と玲奈が言った。

そんなことを楽しそうに話すミサたちに、あかりは背中に冷たいものを感じたが、そういった存在は前の学校にもいたなと、無理矢理自分を納得させた。
そうこうしているうちに、キーンコーンカーンコーンという定番の音が鳴り、鈴木が昨日のようにガラッと無骨に教室のドアを開け「静かにしろ!席に着け!」と言いながら入ってきた。
またね、と言って、あかりたちはそれぞれ自分たちの席に着いた。それからは、退屈なホームルームの始まりだった。

三時間目は、あかりの嫌いな数学の授業だった。年配の女教師と、頼りなさそうな若い補助の女教師が授業を行っているのだが、その組み合わせ自体が舐められやすいのか、始終生徒たちは喋りっ放しだった。
あかりも、隣の席のミサとくだらない話をずっとしていた。
「そ、それでは、いつも通り、今日の回答者の人に問題を解いてもらいます。えーと、えーと、今日は・・・高橋さん、でしたっけ?」
補助の女教師の方が、挙動不審にそう言った。それを聞いたミサが「高橋ってのが、リスキモのことだよ。ほら、あれのこと」と、斜め前あたりの席を指差しながらあかりに耳打ちをした。
その少女は、言われてみると、確かに暗い雰囲気を漂わせていた。そして、中々席を立たなかった。
「高橋さん?どうしたんですか?高橋さん?」それを見て、補助の女教師の方が、ますます挙動不審になる。
仕方ない、といった感じで高橋は席を立った。髪は真っ黒なロングで、黒縁の眼鏡をかけている。両腕にリストバンドをしていたが、良く見ると、足の方に傷が見えていて、まさかあれもリストカットの跡なのかと、あかりはぞっとした。

何やらぶつぶつと言いながら、緩慢な動きで黒板の前に立ち、考える様子も見せずに、高橋は答えらしき数字を殴り書きして、今度は俊敏な動きで自分の席に戻った。
「高橋さん、もうちょっと良く考えて・・・」と、年配の女教師の方が呼び止めたが、高橋はそれを無視する。
それはいつものことなのか、年配の女教師の方もすぐに諦めて、授業を再開した。
「ねっ、超キモいでしょ」とミサに言われたあかりは、おもわず、うん、と答えていた。
高橋は、三人に聞いた印象の通り、いかにもいじめを受けていそうなタイプの生徒だったのだ。
顔は良く見えなかったが、きっとブスなんだろう、とまであかりは思ってしまった。

この日は放課後に、ニコイチだかサンコイチだかに「今日はうちら職員会議で皆部活ないから、一緒に帰ろう~」と言われて、玲奈いわく「うちら、ヨンコイチだねぇ」というらしい関係で四人で一緒に帰った。
三人の話はとても面白くて、あかりは、引っ越ししてから久しぶりに心から笑うことが出来た。
不安だらけだったけど、最初から素敵な友達が出来て本当に良かった、とあかりは思った。

その友達がまさか、いつの間にか、悪魔にしか見えなくなるとも知らずに。
編集 / 2012.06.01 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
ショートショート 【白い杖】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
とある中小企業にて、毎日のように怒鳴られている青年がいた。

青年は大学生。遊びのための金を貸せぐために、アルバイトに来ていたのだった。
ミスが多いというわけではないのだが、青年には仕事に対する真剣さが足りないので、その会社の正社員のうちの一人が、厳しく接してくるのだった。

『ウザってぇ・・・』
青年はそう思いながらも、時給が良いので、辞めずになんとなく働き続けていた。

青年が働くようになってからしばらくたったある日、その正社員の様子がどうもおかしくなってきていた。
誰から見ても、もたもたした動きで、今までとは明らかに違う様子だった。
青年は不思議に思い、少し観察してみると、どうやらその正社員の目が悪くなってしまっているということに気がついた。

青年はおもわず「コイツ、目が見えねぇでやんの!!」と叫んだ。
それは、普段の憂さ晴らしでもあったし、咄嗟に出た暴言でもあった。

正社員は、それを黙って聞き、その場をあとにした。
しまった、とも思ったが、今まで言われてきた言葉を考えればと、青年は勝手に納得した。

青年は、大学を卒業して、バイトをしていた会社の正社員になることができた。
特別にやりたいこともなかったので、就職難の時代、ありがたい話でもあった。

それから更に数年の月日が流れ、青年は、すっかりちゃんとした社会人になっていた。
いつも通りの通勤途中、白い杖をついた老人が、数人の少年たちにからまれていた。
どうも、老人がゆっくりと歩く度に、少年たちが、老人の白い杖を蹴り飛ばしているようだった。

青年、いや、もう立派な社会人は、少年たちを注意しようとしたが、ひるんでしまってできなかった。
そのうち、少年たちは、老人をからかうことに飽きたのか、どこかへ去って行った。

「大丈夫ですか」社会人は、老人に後ろから声をかけた。
「ええ、良くあることですから、大丈夫です・・・」そう言って振り向いたのは、あの厳しい正社員だった。

仕事に燃えていた彼の面影はなく、酷く老けて、みずぼらしい格好をしていた。
社会人は、驚きのあまり声が出なかった。

「あなたはとても優しい人ですね。声を聞くだけで分かります。本当に、ありがとう」
そう言って、かつて社会人の上司だった老人は去っていった。

社会人は、なぜか自分の頬をつたう涙を、止めることができなかった。


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編集 / 2012.06.01 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
お知らせ
無事に退院することが出来ました。ありがとうございます^^
新しいブログもよろしくお願い致します。
6月27日
カテゴリ&月別アーカイブ
 
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