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第九話 【いじめられっことして】
カテゴリ: 【トイレが友達】 / テーマ: 自作連載小説 / ジャンル: 小説・文学
あかりは結局、出会い系の自分の個人情報を削除することが出来なかった。
登録されたのは悪質サイトばかりで、サポートセンターに問い合わせても『そういったことは、お客様の自己責任に任せておりますので』と返信が来れば良い方で、大抵は、余計に迷惑メールが増えるだけだった。
画像もさることながら、住所が掲載されていることは、あまりにも心配だ。ましてや、あの内容では・・・。
最愛の母親に危害が及んでしまうことを、あかりは最も恐れた。
警察に相談してみようか。でも、この程度のことで相談しても良いのだろうか。

頭の中が爆発しそうになりながら、自分の部屋から出ると、テーブルには既にご飯が用意されていた。
『今日も元気に学校に行ってきてね。お母さんより』という手紙も添えられていた。
あかりは、それを読んで、また泣きそうになった。元気になんて、行けないよ・・・そう考えながらも、時間は過ぎていく。
全く食欲がなかったので、せっかく用意してくれた母親に申し訳ないと思いながらも、あかりは朝食を生ゴミ用のゴミ箱に捨てた。

学校に行く途中にも、こそこそと何かを話していたり「ヤリマン!」と言ってくる生徒たちがいた。
予想はしていたものの、とても辛かった。おもわず、足が重くなる。
それでもなんとか、学校の前まで着くと、2年C組の窓から「ヤリマン、死ねー!!」と、男子の誰かの大絶叫が聞こえてきた。
続けて「キモいー!!」と、また別の男子が叫んでいる。
あかりは、このまま学校へ入らず、帰ってしまおうかと思ったが、それでは負けのような気がして、無理に体を学校へと入らせた。

下駄箱を見ると、上履きがなくなっていた。
なんという、昔からの定番のいじめ方法を使ってくるんだろう。
やったのが誰なのかは分からないが、もう、上履きが戻ってくることはないだろう。
上履きを母親に買わせてしまう負担、そして言い訳を考えると、あかりはますます気分が落ち込んだ。
一応、教室に入る前に担任の鈴木に「上履きがなくなっているので、スリッパを貸してください」と言いにいった。
「誰か、間違えて履いていったのかなぁ」とぼけた調子で、鈴木が言う。
そんな鈴木の態度にあかりはイライラとしたが、とりあえず、スリッパが入手出来たので、裸足で学校を歩くことだけは避けられた。

教室に入ると、当然のことながら「ヤリマンちゃん、昨日は何人とえっちしてきたの~?」という、とある男子の暴言で出迎えられた。
それを見て、女子はくすくすと笑うだけだが、男子の方は、露骨に次々とからかってくる。
その中でも、山田 翔平はしつこかった。あかりの周囲をくるくると歩き「ヤリマン~、ヤリマン~」と言ってくる。
山田は学校の誰もが馬鹿にする存在で、はっきり言って、あかりも馬鹿にしていた。
確か、山田は玲奈のことが好きだが、全く相手にされていなかったはずだ。
そのこともあって、余計にからかってくるのかもしれない。もしかしたら、玲奈にけしかけられている可能性もある。
案の定、玲奈が「おはよー☆あれぇ、山田とヤリマン、お似合いだねぇ」と言いながら、教室に入ってきた。
それを聞いて、山田がニタニタと笑う。どんな理由でも、好きな人に構ってもらえるだけで、嬉しいのだろうか。
「やだぁ~、山田超キモい!」玲奈はそう言って、あかりのすぐ横を通ると、さっさと自分の席に座ってしまった。
あかりの現状は、自分とは全く関係ありません、というふうに、涼しい顔をしている。
それを見て、あかりは玲奈に殴りかかりたくなったが、なんとか我慢した。
ここでそんなことをしてしまったら、ますます自分に対する風当たりが強くなるだけに違いない。
それなら、しばらくの間はひたすら我慢して、いじめが収まったら、いつかまた、ミサと仲良くなれる日が来るはず・・・そんな甘い考えを、あかりはまだ持っていた。
その後、ミサも楓も教室に入ってきたが、二人であかりの方を見ながら、ずっとくすくすと笑っていた。

「え~、大川の上履きを誰かが履き間違えているようなんだが、誰か、心当たりないか?」ホームルームにて、鈴木がそう言った。
しまった、この件を口止めしておくことを忘れた、と、あかりは自分の失敗を嘆いた。
第一、普段は全く生徒に関心がない癖に、なぜこういったときだけでしゃばってくるのだろう。
おまけに、言っていることがとんちんかんときている。
「センセー、大川さんは人気者だから、誰かがとってっちゃったんだと思います!!」山田がはしゃぎながら言った。
鈴木にも山田にも、あかりがうんざりしていると、ミサが「友達の私たちが、一緒に探しますから、先生は心配しなくて大丈夫ですよ」と、優等生らしい口調でにこやかに話した。
「そうか。なら大丈夫だな。良かったな、大川」そう言って、鈴木はさっさとこの話題を終了させた。
「まぁ、あんたの上履き捨てたの、私と楓なんだけどね」ミサが、あかりにそっと耳打ちした。

いじめを受けていると、様々な面で不便なことを、あかりはほんの数時間で十分に思い知らされた。
顔を見てこそこそと言われたり、はっきりと暴言を吐かれたりするのはもちろん、体育では、誰もペアを組んでくれる生徒がいなかった。
「あれ?大川、どうしたんだ?」体育教師でもある鈴木が、いまだに一人でいるあかりに問いかける。
「あっ、大川さんなら私と・・・」ミサがそう言いかけた瞬間、高橋が「私が大川さんと組みます」と言った。
それを聞いたミサが、チッ、っと、鈴木には聞こえないように舌打ちをした。
「ありがとう」思いがけない助けに、あかりは高橋に、心から感謝した。
「いえ、私もいつも組む相手がいないので」高橋は、そっけなく言った。

意外と辛いのが、給食の時間だった。給食当番が、誰もあかりの席に給食を配ってくれないのだ。
おまけに、ミサをはじめ、席の近い生徒たちにおもいっきり間を離された。
そして「大川とかいう奴、マジでキモいよな」「出会い系やってるらしいよぉ。ヤリマンなんだねぇ」という、楓と玲奈のやりとりが聞こえてくる。
隣の席のミサにいたっては「さっさと、母親と一緒に無理矢理やられちゃえば良いのに」とあかりに向かって言ってくる。
やっぱり、あれはミサの仕業だったのか・・・分かってはいたものの、あかりは改めてショックを受けた。
他の生徒たちも似たような話をしており、ある意味、教室中があかりの話題で持ちきりだった。

あかりは、今日はまだ何も食べていないのに、吐き気がこみ上げてきた。
おもわず席を立ち、急いで教室から出る。また暴言を言われたような気がするが、もはや何も聞こえなかった。
体育のときに飲んだ水と、胃液をあらかた吐いてみると、あかりは少しだけ気持ちが落ち着いた。
はぁ、と言って、座り込もうとしたが、そこは、汚い方のトイレであることに、ようやく気がついた。
誰も使わない、誰にも必要とされていない、汚いトイレ。
まるで、今の私みたいだな、とあかりは思った。
そう思うと、なんだかこのトイレが自分の一番の居場所のように思えてくる。

そのとき突然「あ~かりん♪」と、ミサの明るい声が聞こえてきて、あかりは、心臓が飛び出るかと思った。
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編集 / 2012.06.06 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
お知らせ
無事に退院することが出来ました。ありがとうございます^^
新しいブログもよろしくお願い致します。
6月27日
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