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その他 【いじめ劇台本(仮)】
カテゴリ: 【その他】 / テーマ: 文学・小説 / ジャンル: 小説・文学
まだ十代のころに書いたいじめの劇の台本です。
特に演じてもらえる機会もなく、ブログを作成する度に公開するぐらいしか使い道はありません(^^;
今もそうですが、青臭い文章で非常に恥ずかしいです。

↓長いので追記からお読みください↓



+登場人物+

<A子>
気が弱く、人との接し方が分からないために、無愛想で話しづらい印象を人に与える。
小学校入学当初から、当たり前のようにいじめのターゲットになった。中学校でも、何も変わらずいじめを受けている。
いじめの影響で、暗く挙動不審になり、恐怖心から、自分から人に話しかけることは殆ど出来ない。運動がとても苦手で、全体的に不器用。成績も良くはなく、教師からは態度も悪いようにしか見えないので、教師にも嫌われがち。
あらゆる手段を尽くしたが、いじめが解決することは全くなかった。
今の自分の全てに絶望しながら、ぎりぎりの精神状況で学校に通い続けている。
いじめ自殺報道に対しては『私もこの苦しみから開放されるのなら自殺したい』と考えている。


<ミキ>
いつも元気でプラス思考。誰とでも親しく出来る。比較的A子とも親しく、同じクラスなので、出来るだけ気遣うようにしている。
ただ、本人ではないのでどれだけ辛いかということは良く分かっていない。そして、皆から嫌われたり、悪口を受けたりするのはA子にも悪いところがあるせいだとも思っているので、全面的に味方することも違うという風に考えている(A子がいじめを受けているという風には余りとらえていない)。
いじめ自殺報道に対しては『なんでこの人たちは自殺したんだろう?良く分からない。でもかわいそう』と考えている。


<隼人>
明るくて社交的。常に生徒の中心で、奇妙なカリスマ性がある。運動神経抜群で、行動もすばやいので先輩や教師にも好かれる。
しかし、小学校のころから(A子とも同じ小学校出身で、ずっといじめを仕掛けて来た)いじめの先導に立っており”弱い”と認識した相手を傷つけ、苦しめることが大好きという、非常に残酷な心も持ち合わせている。
自分のしている行為はいじめだとはっきり自覚していて、相手が死にたいぐらい落ち込んでくれると、最上の喜びを感じる。いじめ自殺報道に対しても爆笑していた。
『A子が自殺したらしたで面白いが、遺書に書かれるのは迷惑だからやめて欲しい』と考えている。


<聡志>
小学校は別の県に通っており、そこで酷いいじめを受け続けて来ていた。
もう二度といじめを受けたくないと強く思っていて、中学校では入学した当初から”強い”隼人に従い続けている。
いじめ自殺報道は、昔のことを思い出したくないので極力見ないようにしている。


<孝一>
隼人とは昔から親しい関係で、いつも一緒にいる。いじめも当然のようにしている。
以前はA子に対しても優しく、気遣って接していた。が、いじめを容認しているかのような学校の姿勢や、隼人の影響、そして、学年が上がるごとにA子に対して嫌悪感を抱くようになったということもあり、変わっていってしまった。
自分たちがしている行為がいじめであるという認識は薄く、いじめ自殺報道に対しても『こんな酷いことってあるんだなあ。信じられない』とボケたことを考えている。


<優香子>
隼人たちのグループと親しく、気が強い。女子の間ではリーダーシップをとっている。媚を売るのが得意なので、教師には気に入られる。
A子とはまともに接しようとしないが、教師に気に入られたい時は味方のふりをする。
親友であるはずのサヤに対しては、人気では絶対に負けたくないという敵対心ばかり持っている。
いじめ自殺報道に対しては『それぐらいで自殺するなんて弱すぎ!大体、いじめはいじめられているキモい奴が悪いに決まっているじゃん』と考えている。


<サヤ>
優香子の親友ということになっており、常に一緒に行動している。内心、いじめを平気で行える優香子のことを嫌っていて、かげでは悪口を言っている。
とはいえ、自分もいじめを止める気はなく、している時はむしろ楽しんでいる。それでも、家に帰ってから一人で悩むこともある。
いじめ自殺報道の影響で、いじめている相手が自殺することをおそれているので、優香子たちがいない時はA子に対して普通に接している。


<金原先生>
この劇の中学校の2年A組の担任で、学年主任。体育教師。過去の学校生活では明るく社交的な生徒だったので、いじめを受ける人間のことが理解出来ない。
常に人気者や優等生の味方で、嫌いな生徒に対しては威圧的に接し、他の生徒の前でも平気でその態度を表す。生徒の人気を得るために嫌いな生徒をからかうので、結果としていじめの発端をつくることもある。
問題があると感じた生徒に対しては、辛く接した方がその相手のためだと考えているため、自分が良いことをしていると信じきっている。
自分を好きな(ように見せかけている)隼人たちのことを気に入っている。A子のことは見ているだけでイライラするらしく、しょっちゅう呼び出しては一方的な説教をする。
徹底して『私のクラスにはいじめがない』と断言しているので、校長からの評価は高い。


<田山先生>
社会科教師。温和な性格で、学校のいじめに対しても心を痛めているが、自分の無力さに打ちのめされている。
A中学校の教師で唯一いじめの事実を認めていたことから、様々なところから圧力を受け、いじめを受けている生徒のことを表立ってかばうことが出来なくなってしまった。
『指導力不足』という名目で、近々地方の学校に転勤させられるという噂もある。


<校長>
この劇の中学校の校長。学校にいじめが存在することは気がついている。
しかし、いじめがあると教育委員会などに知られてしまうと自分の立場が危うくなるために、事実を絶対に認めない。


以下台本

【通学風景】

(通学風景。楽しそうに登校している生徒たちがいる中、A子は肩を落とし、覇気がなくゆっくりと歩いている)

A子:(録音)私は中学二年生。A子という名前を持っているけれど、学校の生徒は私のことを”ゴキ”と呼ぶ人が多い。ゴキの意味は、ゴキブリの略称。私は『ゴキブリみたいな、人に不快感を与えるだけの必要のない存在』だから、だそうだ。

隼人:(録音)ゴキブリのA子、超キモいー!!死ねー!!

A子:・・・またか。

A子:(録音)私は、朝登校して来る時は『おはよう』ではなく『死ね』と言われるのが日課だった。名指しで言われても、誰も止めることはない。生徒はもちろん、先生たちも。

A子:学校、嫌だな・・・。怖いよ・・・。

ミキ:(走って舞台に出て来る)おーい、A子ー!!

A子:あ、おはよう、ミキ。

ミキ:一緒に登校しよう。

A子:うん、ありがとう。

A子:(録音)こういう風に、気を遣ってくれる人がいるおかげで、私はなんとか学校に通い続けることが出来ている。だけど、辛くてしょうがない・・・。こんな思いをしてまで通い続ける理由が、あるのだろうか。

(二人、舞台からはけていく。舞台暗転)


【体育】

(ジャージ系の服装で、それぞれ親しい者同士で集まっている。チャイムが鳴る。金原、舞台に出て来る)

金原:(笛を吹く)全員、集合!まずは準備運動の馬飛びをします。好きな者同士、ペアを組んでください。

(他の生徒はすぐにペアになるが、A子は孤立してしまう)

優香子:こういう時一人でいる人って、友達がいないってわざわざアピールしているみたいだよね。

サヤ:かわいそう、って同情されたいのかな?(わざとA子の方を見る)

A子:(無言で二人の方を睨む)

サヤ:こわーい。

ミキ:(気遣うように)A子、一緒に組もうよ。

A子:う、うん、ありがとう。

ミキ:(普通の高さで)よし、頑張って。

A子:えっ、えっと・・・(一応飛ぼうとするが、まるっきり駄目)。ごめんね、無理そう。

ミキ:(少し下げて)どうかな?

A子:(頑張るが、やはり飛べない)ごめんね。

ミキ:(大分下げて)う、うーん、これなら大丈夫かな?

A子:(酷く困った顔をしながら)本当に申し訳ないんだけど、思いっきり下げて貰えるかな。しゃがんだぐらいの低さで。

ミキ:(丸まった感じ)こ、これでどう?

A子:(飛ぶというより、またいで)なんとかなったかも。ごめんね。私、全然飛べなくて・・・。

ミキ:良いよ。気にしないでね。

優香子:(A子に指をさし、爆笑しながら)何あれ!超ありえなーい。なんであんなことも出来ないの?キモすぎるんですけどー。

サヤ:あれはありえないよね。

金原:(笛を吹く)全員、集合!(生徒たちは整列する)今日は、サッカーをします。前回キャプテンを決めましたが、生徒の分配が決まったので、キャプテンはチーム表をとりに来てください。

(隼人や孝一、チーム表を受け取る。隼人、それを見てにやにやする)

隼人:(聡志に近づいて)お前、これ見ろよ。Aチームのメンバー表に、超キモい文字があるぜ?

聡志:(紙をのぞきこみながら)なんだこれ、超うぜえー。ゴキと同じチームだなんて、最悪じゃん。

隼人:(待っていたとばかりに)足手まといがいると、俺がいくら上手くたって・・・なあ。

孝一:お前たち、悲惨だなー。俺のBチームは、そこまでキモい奴はいないもん。

隼人:キモいだけならまだマシ!ゴキは運動も出来ないんだよ。あいつ、ほんと何も良いところがねえよなあ?

孝一:だったら、わざとゴキに強いボールを送るようにしようか?

聡志:おいおい、そうしたらこっちが確実に負けると思うんだけど。

隼人:でも、面白そうじゃん?あいつ、どうせ逃げまくるだけだろうし。

聡志:(少し無理をした感じで)まあ、かなりね。顔にでもぶつかったら爆笑出来る・・・とは思う。

孝一:よし、決まり!他の奴らにも伝えておくよ。ゴキに集中攻撃だ。Bチーム、集合ー。

(孝一、Bチームの生徒の名前を呼びながらはけていく)

隼人:(名前を呼び)優香子、サヤ、それからキモいの!さっさと集まれよ。

金原:(笛を吹く)集合!表の通り、試合を開始するように。

(Bチーム、A子舞台に出て来る。AチームとBチームで試合を始める。Bチームの男子たちは真面目にやっている振りをしながら、さり気なくA子にだけボールを強く蹴る。その度に、顔を見合わせてにやにやする。A子はおびえて逃げ続ける)

隼人:おい、何やっているんだよ!いくら下手だからって、逃げてばかりじゃしょうがないだろうが。

聡志:(内心A子に同情しながらも)そうだよ、悪いのは顔だけにしておいてくださいー。

隼人:そんなことだから嫌われるんだよ。

優香子&サヤ:(ありえないんだけど・・・。キョドってて超キモい!など、ひそひそ話)

金原:(笛を吹く)試合終了!ちょっと、全員ここに集まりなさい!

(全員、金原のところへ集まって)

金原:先生が見ていたところ、チームによって実力の差が開いているようなので、反省会を開きます。特に、Aチームは結果が悪すぎます!誰が悪いのか、キャプテンの隼人は教えてちょうだい。

隼人:(大げさな動作でA子を指差して)それは、A子さんが逃げてばかりで、何もやってくれないからです。そのせいで、皆もペースをみだされているんです。

優香子:(わざとらしく)確かにね・・・運動が苦手だから、ボールが怖いのは分かるけれど、他の女子は頑張っているのにさ。(サヤの方を向いて)ね、そう思わない?

サヤ:私もそう思います。A子さん、何もやってくれないんだもん。私たちは頑張っているのに。

聡志:(隼人に気に入られるために、本気で怒っている振りをして)そうだよ、ふざけるなよ!お前、やる気あるのか?

A子:(おもわず口を開いて)ありません!

(皆、驚いた様子で顔を見合わせる)

金原:(A子はまだ何か言おうとしているが、遮って)やる気がないだと!?それは皆に対して失礼すぎるでしょう。ただちに撤回しなさい。

隼人:(内心、面白いことになったと喜びながら)はあ・・・あきれたよ、俺。

優香子:隼人たち、頑張っているのにかわいそー。

(皆、顔を見合わせてざわざわしている。チャイムが鳴る)

金原:静かに!すぐに着替えて、次の授業に間に合うようにね。A子は残れ。

生徒:はーい。

(生徒たち、楽しそうに舞台からはけていく。ミキだけがA子を心配そうに見ながらはける)

金原:お前は、本当に何事に対してもやる気がないんだな。

A子:・・・。

金原:なんで、他の人が普通に出来ることを出来ないの?努力すれば、なんだって出来るようになるだろ。出来ないのは、何も努力をしないからでしょう。

A子:・・・。

金原:黙っていないで、言うことがあるでしょう。

A子:・・・。

金原:お前、私を馬鹿にしているの!?

A子:・・・。

金原:・・・もういい。お前を相手にしていると、先生疲れる。お前もさっさと着替えて来なさい。

A子:・・・はい。(A子舞台からはける)

金原:まったく、クラスにいても邪魔なだけの存在なんだから!

(舞台暗転)


【社会】

(教室風景。騒がしい感じ。男子・女子それぞれグループごとに固まっている)

サヤ:・・・それでさ、B組の佐々木に告ったのがさ、C組のあいつらしいよ。

優香子:えっ、マジで!?それ知らなかった。超ありえないじゃん。・・・げ、そういえば、次の授業田山だから、皆、急いで準備しよ。

サヤ:ヤバーい!私、宿題やって来てないや。田山、宿題とかちゃんと提出しないと、いちいち評価下げるんだよね。超ウザいし。

優香子:しょうがないなあ、私、ちゃーんとやって来たからうつさせてあげる。

サヤ:ありがと!

優香子:その代わり、放課後にマックおごってね。

サヤ:げっ、これは高くついたなあ。

(一方、男子生徒たち)

隼人:お前さ、ゴキの机の中、あさって来いよ。

聡志:え?なんでだよ?キモくて触りたくないよ。

隼人:良いから。お前、仲間だろ?ゴキの次の授業の宿題、とって来いよ。

聡志:・・・。分かったよ。

孝一:おお、美しい友情だな。聡志君カッコ良い!

聡志:(A子の机の中をあさって、紙を取り出す)これか?

隼人:よし、サンキュー。(紙を受け取って)うわっ、こいつ超字下手だなー。何もかもがキモいな。こんな物、こうしてやろう。(紙をビリビリに破いて、ゴミ箱に入れてしまう)

聡志:うわっ。

隼人:(鋭くにらんで)何か文句あるのか?ご希望だったら、お前のやつもこうしてやろうか?

聡志:い、いや、凄いと思うよ。素敵だよ、素敵。

孝一:隼人はやることが豪快だなあー。

(A子が舞台に出て来る。男子たち、いっせいに吐く真似をする。女子たちも、ミキ以外は避けたり、嫌がったりする)

隼人:キモいのが来ちゃったよー。

孝一:(馬鹿にした口調で)よっ!今日のヒーロー!やる気がないなんて、なかなか言えることじゃないよな。ボク、尊敬しちゃう。

(生徒たち、爆笑する。ミキがさり気なくA子に近づく)

ミキ:A子、金原先生に何を言われたの?

A子:(すっかり落ち込んでいて、上手く会話が出来ない状態で)良く、分からない。

ミキ:良く分からないの?

A子:いつも通り、怒られただけだよ。

ミキ:そうなんだ。A子も運動が苦手なのは分かるんだけど、やっぱり、やる気がないって皆の前で言ったのはまずいと思う。それは、金原先生から怒られてもしょうがないよ。

A子:(心ここにあらずといった感じで)そうだね。ありがとね。

ミキ:(困った感じで)私、自分の席に戻るね。もう、授業始まるし。

(チャイムが鳴り、皆自分の席に戻る。田山、舞台に出て来る。生徒たち、しっかりと挨拶する)

田山:皆さんこんにちは。相変わらずA組は元気そうですね。

隼人:そうそう!もう、俺たち超元気。

田山:(少し苦笑いしながら)隼人君は特に元気そうね。とりあえず、社会科の授業を始めます。まずは、プリントの提出をしてください。後ろから集めていって。

(順々に紙を渡していく。A子、机の中を必死に探すが、紙が見つからず、焦る)

田山:どうしたの、A子さん。また忘れ物?

A子:ちゃんとやっておいたんですけど、見当たらなくて。

田山:そうなの。とりあえず、減点1ポイントね。A子さん、もうこれで減点10ポイントよ。ちょっと、気をつけるようにしてね。

A子:・・・ごめんなさい。

孝一:すげー、天才だよ、天才!

隼人:なかなかやれることじゃないよねえ?

孝一:さすが、運動じゃなくて勉強に命をかけている人は、やることが違いますね。

聡志:(気まずそうにしている)・・・。

田山:(A子の方を心配そうに見ながらも)さて、授業を始めます。

(相変わらず隼人たちはA子の悪口を言っている。田山はたまに注意をするが、殆ど無視をされ、仕方なく見てみぬふりをする。そのうちチャイムが鳴る)

田山:それでは、予習・復習をしっかりとね。起立!礼。ありがとうございました。(田山、舞台から出ていく。生徒はまた騒ぎ始める。隼人だけ舞台からはける)

ミキ:(A子に近づいて)A子、宿題やって来たんじゃなかったっけ?

A子:うん、やって来た。でもなくなってた。

ミキ:・・・実は、さっきの休み時間に聡志が隼人に何か言って、それからA子の机の中をあさっていたんだ。もしかしたら、宿題をとったのはあいつらかもしれないよ。

A子:そうかもしれないね。というより、そうなんだろうね。

ミキ:A子、大丈夫?顔色悪いよ。

A子:うん、駄目だからトイレに行って来る。

ミキ:分かった、私もついていくよ。(二人で舞台からはける)

(それぞれ会話が盛り上がっている)

隼人:(頃合を見はからって)あのさー、最近、なんとなく聡志ウザくねえ?罰として、あいつの机を廊下に出しておこうぜ。

優香子:はあ、マジで?

孝一:さんせーい!(隼人と孝一で聡志の机を舞台外に出す)

優香子:マジでやってるー、超ウケるんですけど!

サヤ:ちょっと、いくらなんでもヤバいよ。

優香子:何もヤバくないって。別に、聡志が戻って来たら自分で机戻せば良い話じゃん。

隼人:そうそう。まあ、ゲームみたいなものだから。

(少しの間、適当に会話する。A子が舞台横から聡志の机を持って出て来る。後ろからミキが心配そうについていく。皆、驚く)

隼人:キモい奴がキモい奴の机を持って来るとはな。

優香子:ちょっとー、ゴキと聡志って付き合っているの?

A子:・・・そういうわけじゃないよ。廊下に机が出ていたから、戻しただけ。

隼人:あらら、良い子ぶっちゃっているよ。

孝一:キモい奴は何をやってもキモいけどな。

(聡志が舞台に出て来る)

隼人:おお、お前、喜べよ。お前の机が廊下に出ていたんだけれどさ、ゴキが持って来てくれたんだよ。

聡志:・・・え?どういうことだよ?

孝一:まあ、ぶっちゃけちゃえば、お前のことがウザくなったから、俺たちがお前の机を廊下に出したんだけれど、ゴキが持って来ちゃったんだよね。

聡志:・・・そうか。

隼人:そうか、じゃねえよ。つまんねえな。この際、ゴキと付き合っちゃえよ。

優香子:バカップルならまだマシだけど、あんたたち二人ならキモカップルじゃん!最悪ー。

孝一:結婚式には呼んでくださいね!!お二人さん、お似合いだよー。

聡志:・・・。(何かを考えているような表情)

隼人:おいお前、なんか反応しろよ。あんま調子のんな。(聡志につかみかかろうとする)


【心のノート的時間】

(チャイムが鳴る。金原が舞台に出て来る。生徒、しっかりと挨拶する)

金原:皆、今日も仲が良さそうだね。

隼人:(聡志をからかっていたことを利用して、無理矢理聡志と肩を組んで)そうなんです、僕たち本当に仲が良いんですよ。これも、金原先生のおかげです。

孝一:僕、金原先生の授業が一番楽しみです!

金原:先生、そう言ってくれると凄く嬉しい。今日は、学級会であなたたちにぴったりのテーマがあるの。『A中学校を誇りに思うところ』よ。紙を配るから、これに書いて提出して。(金原が紙を配り、前の生徒から紙を順々に渡していく)

金原:(後ろまで配り終わったら)それでは、時間をあげるから書いてみてね。

隼人:僕、ありすぎて困っちゃうなあ。

(全員、紙に何か書く)

金原:(全員書き終えたら)皆、書き終わったみたいね。それでは、今度は後ろから紙を集めてください。(紙を受け取る)早速読んでみます!

金原:うんうん、隼人のものは素晴らしい。『どこが、というより、この学校を全てのことにおいて誇りに思っています。最高の学校です』だって!『特に、担任の先生が僕は大好き』だって!うわー、先生、照れちゃうよ。

隼人:僕は心からそう思っていますから。

金原:ありがとう。隼人こそが、我が学校の誇りね。(紙をめくって)優香子ちゃんのものも素敵。『生徒同士がとても仲良く、誰もが楽しく学校に通っています。そして、いじめがありません。それが、私が何よりもA中学校を誇りに思えるところです』先生も、本当にその通りだと思う。さすが優香子ちゃん。

優香子:(照れた動作で)本当のことですもんね。

金原:(紙をめくって)どれもとても素晴らしいことばかり書いてあるわ。(手を止め、突然口調が変わって)A子、お前これ、ふざけているのか?何が『いじめがなくなれば、誇りに思えることもなくはないと思う』だよ!

(教室全体、シーンとなる)

隼人:うちの学校にいじめなんてないよなあ。

優香子:(わざとらしく)A子さん、大丈夫?確かにA子さんは友達が少ないかもしれないけれど、いじめられてなんかいないよね。もし、そんな人がいるんだったら、私が相談に乗るよ。

隼人:そうだな。いじめを受けている、って感じている人がいるなら、皆で相談に乗らなくちゃ。

孝一:さすがは2年A組、仲良しクラスだね。

金原:まったく、お前はいつもいつも・・・。皆は分かってくれていて良かった。こんな奴に優しくしてあげるなんて、本当に優しい生徒たちだわ。私の学校に、いじめがあるわけがないから。お前は、被害妄想を少しは控え目にしなさい。A子のものは悪いお手本だから、皆、当たり前だけど、真似しないようにね。

(生徒たち、微妙な表情をしている)

金原:お前のせいで不愉快な気持ちにさせられてしまったよ。(不機嫌そうに、次の紙をめくって)・・・何これ!『この学校を誇りに思えることは一生ないと思う』って。(聡志の席の近くに行く)おい、お前も一体何を考えているんだ!?

聡志:は、はい、ごめんなさい。つい、出来心で。

金原:お前、A子以下だよ。(紙を破く)

(チャイムが鳴る)

金原:(教卓に戻って)まったく、信じられないことを書く奴らもいるものね。まあ、気をとりなおしてと。次の時間は給食だから、皆、ちゃんと準備しておくように。

(挨拶。金原は舞台からはける。他の生徒は、友達同士ではけていったり、話していたりする)


【給食】

ミキ:A子、どうしてあんなこと書いちゃったの?

A子:この学校を今の状況で誇りに思うことなんて、とても出来ないから。

ミキ:A子は正直すぎるよ。ああいう時には、金原先生に気に入られるようなことを書いておけば良いんだよ。A子は、そうでなくても元々目をつけられているんだし。

A子:うん、そうなんだけどね・・・。

ミキ:今更言ってもしょうがないか。今度から気をつけよう。A子は給食当番だったよね?早く配らないと。

A子:そうする。

(机・椅子を給食の席にする。A子が給食を配り出す。どの生徒も嫌そうな顔をする。隼人たちの班に、恐怖でA子は配ることが出来ない)

隼人:A子ちゃーん、俺たちの班には配ってくれないんですかー?

優香子:私たちは給食、食べるなってこと?いじめかな?

隼人:いじめのない学校にしたいんだもんね。ちゃんと平等に配ってくれないとね。

(A子、一つだけ持っている食器をぞんざいに隼人の席に置く)

隼人:サンキュー。(A子にわざと聞こえるように)気持ちわりいー。こんなの、食えねえよ。お前にやるよ。(優香子の方に食器を押しやる)

優香子:ちょっとちょっと、私も嫌なんですけど。(笑いながら、サヤの方に食器を押しやる)

サヤ:やだー。(にやにやしながら、聡志の机に食器を置く)

聡志:(普通に受け取る)・・・。

隼人:おい、お前、何やっているんだよ。

優香子:何、聡志ってゴキのこと好きなの?

隼人:さっきも、まるでゴキみたいなこと書いていたよな。なんだ、机を持って来てくれた優しさに惚れたか?

優香子:キモっ!超引くんですけどー。

隼人:まあ、まさかゴキのことを好きになる男子がいるわけがないからな。皆が嫌がることを引き受けてやろうっていう、そういう考えで、だよな?(おどす口調で)でも、別にそういう奴は俺の仲間にはいらないけどなー?

聡志:・・・。(何かを決意したかのように、無言で食べ始める)

優香子:やだー、何考えているの?

サヤ:(唖然としながら)えっ、聡志・・・。

隼人:お前・・・そういうことなら、俺にだって考えがあるからな。

(さり気なくA子はその光景を見る。全員に給食が配り終わり、全員席に着く。孝一はA子の隣の席)

孝一:(A子の方からおもいっきり机を離して)さて、皆で楽しく給食を食べましょうか。あ、キモい人は俺たちの方には向かないで食べてね。給食、吐いちゃうから。

隼人:孝一、お前の給食、ゴキが持って来たやつだぞ。

孝一:げっ!じゃあ俺、今日給食、食べられないんじゃん。最悪ー。(予備の給食と交換してしまう)これで良し、っと。

(他の生徒は楽しく会話したりしているが、A子だけは下を向いたまま、少しだけしか食べていない。全然食べないうちに、一人席を立って舞台からはける。生徒たちの笑い声が響く中、舞台暗転)


【給食後のちょっとした時間】

(机・椅子はまた普通の席。教卓の後ろに金原)

金原:さて、昼休みの前にちょっとお知らせがあります。来週月曜日に、学校全体でやる歌集会があります。半年に一度ぐらいはやっているけれど、クラス対抗のカラオケ大会みたいなものね。次の時間、今回のA組の代表者を決めたいと思うので、皆、そのつもりでいてね。

生徒:はーい。

金原:あ、それと。A子!お前、いつも通りのことだけど、給食費がまた未払いよ。すぐに職員室に来るように。(舞台からはける)

優香子:給食費未払いだって・・・ありえないんだけど。

隼人:貧乏人だなあ。だからキモいんだな。

(全員、舞台からはける。舞台暗転)


【お昼休み/職員室】

(職員室風景。先生たちが机に座っている)

A子:(舞台に出て来て)失礼します。

金原:遅いわよ。それと、いつものことだけど、お前は目つきが悪いから。いつも注意しているんだから、いい加減に直しなさい。

A子:・・・はい。

金原:あのねえ、何度も何度も言うのは嫌なんだけれど、お前だけはいつも給食費が未払いなのよね。親に伝えていないんじゃないの?

A子:伝えてはいるんですが、私の家はお金がなくて。

金原:お前がお前なら、親も親だってことか。私が立て替えているから、凄く困っているのよね。

A子:ごめんなさい。

金原:お金の問題は、謝られるだけじゃ困るのよ。大体ね、お前はなんで人と上手く関わることが出来ないの?隼人や優香子ちゃんだって、お前と『友達になってあげる』って言っているんだから、お前が頑張らないと、これ以上はどうにもならないの。少しは勇気を出しなさい。

A子:・・・。

金原:それとね、この前、お前がずる休みした日、クラスでアンケートをとったのよ。『A子の悪いところをあげてください』って。回答された内容は教えられないけどね、お前、随分酷いことをしているみたいじゃない?最初は皆、お前のこと嫌いじゃなかったみたいだけど、お前が人を傷つけるような行動ばかりするから、嫌いになったみたいよ。

A子:(必死に涙をこらえて)そうですか・・・。

金原:お前、人の話をちゃんと聞いているのか?(見下した表情で)お前、今からそんなに”弱い”んじゃ、社会に出てやっていけないでしょうね。殺人者にでもなりそうで、将来が心配だよ!

A子:・・・。

金原:先生は忙しいから、お前だけに時間を割いてもいられないから。もう帰りなさい。

A子:分かりました。それでは。(A子舞台の端に行く。それを田山が追いかける)

田山:待って、A子さん。あのね、クラスで何か色々と言われているのかもしれないけれど、何事もあまり気にしないようにね。面白い反応を返すと、いつまでたっても相手側はやめないの。無視するのが一番よ。・・・先生も、本当は力になってあげたいのだけれど、余裕がないの。卒業まで辛抱しなさい。ね?

A子:・・・はい。(A子舞台からはける)

金原:薄気味悪い。ああいう子は、何を考えているのか分かったもんじゃないわ。私のクラスじゃなければ良かったのに。全くクラスに必要がない存在だわ!

田山:(机に戻って)金原先生、ちょっと言いすぎではないでしょうか?私には、A子さんがそこまで悪い生徒には見えません。A子さんには、厳しく接するよりも暖かく接してあげた方が良いと思います。

金原:あら、では私の指導の仕方が悪いということでしょうか?田山先生。

田山:そういうわけではありませんが・・・。

金原:あのねえ、田山先生のクラスは、いじめが酷いっていう評判なんですよ。人のクラスに対して意見をする前に、自分のクラスをどうにかした方が良いのではないでしょうか?

田山:・・・すみませんでした。

(舞台暗転)


【お昼休み/教室】

(教室風景。隼人と優香子のグループと、他に何人かの生徒がいる。聡志はいない)

優香子:あのさ、金原が言っていた歌集会のクラス代表、ゴキを推薦しようよ。

サヤ:はあ、なんで?あいつ、歌上手いの?

優香子:逆よ、逆!聞いたことはないけれど、どうせあいつのことだから、歌も下手に決まっているでしょ。全校生徒の前で恥かかせてやろうよ。

サヤ:(引いて)え、それはさすがにちょっと・・・。

優香子:何?サヤ、私たち親友だよね。親友の言うことを断るの?

サヤ:だ、だって、そうしたら、うちのクラスも恥かいちゃうじゃん。

隼人:(会話に入って来て)どうせ、うちのクラスに歌が上手い奴なんていないんだから、別に良いだろ。それなら、楽しんだ方が良くないか?

孝一:俺も、それが良いと思うな。皆で推薦しようよ。金原は俺たちの味方だし、他に立候補も出ないだろうから、ゴキに絶対決まるぜ。

優香子:男子たちもそう思うなら、そうしないと損だよ!女子にはサヤからもそう伝えておいて。

サヤ:え、う、うん。

優香子:あいつがどんなに傷ついたって、私たちには関係ないんだからさ。よろしくね。

隼人:次の時間が楽しみだな。

サヤ:(困った顔をして)・・・。

(舞台暗転)


【学級会】

(教室風景。教卓の後ろに金原)

金原:さて、それでは先ほど言っていた通り、歌集会の代表者を決めたいと思うんだけれど、誰か立候補者はいるかな。

(生徒同士、顔を見合わせたりしているが、誰も手をあげない)

金原:困ったね。そういえば、このクラスには歌集会の代表者を経験した人はいないんだよね。優香子ちゃんとか、歌が上手そうだけれど、どうかな?

優香子:えっと、私はA子さんを推薦・・・。

(優香子が言い終わらないうちに、意を決したようにA子が手をあげる。皆驚く)

A子:私、やります。やりたいです。

金原:え、お前、歌とか歌えるのかよ?

A子:歌えます。頑張りますから、歌わせてください。

金原:お前じゃ不安だなあ。やめておけよ。お前のせいで、クラス全体に迷惑がかかることになるんだから。

隼人:僕、A子さんにとって、このクラスに馴染む良いきっかけだと思います。僕からもA子さんを推薦しますよ。

優香子:う、うん。私も、元々A子さんを推薦したいと思っていたんです。ぜひお願いしたいな。

金原:人気者の二人がそう言うなら、そうしてみようか。他の皆も、良ければ拍手をしてください。

(お互い顔を見合わせつつ、生徒全員拍手をする)

A子:ありがとうございます。

金原:よし、クラスに恥をかかせない程度には頑張れよ。期待はしないけれどな。課題曲は『(まだ未決定)』だから。本当は担任と練習し合うらしいんだけれど、お前は別に良いだろ?好きに自主練習しておいて。

A子:・・・分かりました。

金原:それでは、帰りの会を始めます。明日からは土日と休みですが、皆、だらけすぎないようにね。月曜日の持ち物は・・・。(台詞を言いながら舞台暗転)


【放課後/ミキとの会話】

(教室風景。放課後らしく、だらけた感じ)

ミキ:A子、なんで自分から立候補なんてしたの?

A子:分からない。気がついたら、おもわず手をあげていたんだ。

ミキ:そんな理由でなの?・・・あのね、伝えて良い話なのかどうかは分からないけれど、優香子たちのグループが『恥をかかせるために、皆でA子のことを推薦しよう』って、女子たちに言っていたんだ。

A子:そういう気がしたよ。優香子さんが私を推薦するなんて、おかしいから。

ミキ:分かっていたなら、なんで立候補なんかしちゃうのよ。A子、全校生徒の前で歌なんて歌えるの?大丈夫?

A子:大丈夫かどうかは分からないけれど・・・やってみたいんだ。

ミキ:・・・私、A子のことが良く分からないよ。いつも落ち込んでいるばかりの人が、全校生徒の前で歌なんて歌えるわけがないと思う。A子のこと、もう私には支えきれないよ。ごめんね。

A子:ミキは気にしないで。私が自分でやったことだから。

ミキ:そうさせて貰う。あいつらの思うつぼだけにはならないように願っているから。それじゃあね。(舞台からはける)

A子:ミキ・・・。

(舞台暗転)


【休日/聡志との会話】

(街の風景。私服姿のA子が舞台に出て来る)

A子:(録音)今日は日曜日だから、街に出て来てみた。同じ学校の人たちに会わないように気をつけながらだけれど、少しは気晴らしがしたいから。

A子:(聡志が舞台に出て来る。聡志を見つけて)あっ・・・。

聡志:あっ、A子。

A子:あっ、あの、その。

聡志:なんだよ。

A子:(思い切って言う感じで)この間は、私が配った給食を受け取ってくれてありがとう。

聡志:知っていたんだな。別に、お前のためにやったわけではないけれど。

A子:そうかもしれないけれど、ありがとう。嬉しかった。

聡志:・・・どういたしまして。

A子:それじゃあ、また。(舞台からはけようとする)

聡志:あ・・・俺、はっきり言ってお前のこと、好きなわけじゃないよ。暗いし、友達全然いないし、先生には怒られてばっかりだし。

A子:(振り返って)あなたたちからそう思われていることなんて、ちゃんと知っているよ。今更言われても。

聡志:でもさ、俺、小学校は他の県だったんだけど、実は、そこでずっと酷いいじめを受けていたんだ。

A子:そうだったんだ。私、聡志君と話したことがないから、知らなかったよ。

聡志:毎日毎日、死にたかった。地獄だったよ。今のお前と、同じ感じ。

A子:そんな、それなのに今度は自分がいじめをする側に回ったの?

聡志:・・・俺がいじめを受けるようになったきっかけは、いじめを受けている友達をかばったことだったんだ。そして、そのかばった友達も、俺をいじめて来るようになった。
ある日、そいつに俺は階段から突き落とされた。足の骨を折って、入院したよ。誰も見舞いには来なかった。その件は、全部俺のせいだっていうことになっていたよ。
どんなに頑張っていても、いじめを受けているなら”弱い”生きる価値のない人間。人を傷つけてでも、生き残ることが”強い”人間なんだなって思い知らされた。

A子:そんな・・・。

聡志:中学校では絶対にいじめを受けたくなかったから、隼人に従って、お前をいじめた。
”仲間”が沢山出来たし、人を傷つけることは確かに快感だった。
だけど・・・やればやるほど、とても悲しくなった。傷ついているのはお前のはずなのに、俺も悲しくてしょうがないんだ。
俺の望んでいたことはこんなことじゃない。ただ、普通の学校生活を送って、友達と楽しくすごしたかっただけなのに、って・・・。
俺は今も地獄の中だよ。いじめをすることが楽しいだなんて、そんなの一番”弱い”人間だとようやく分かったんだ。

A子:・・・。

聡志:これから、お前のことをかばい続けることは出来ない。俺は”弱い”人間だから、また自分もいじめを受けてしまうことは絶対に嫌だ。それはこれからも変わらない。だけど、俺はあんなにお前のことをいじめていたのに、俺の机を戻してくれたことが、凄く嬉しかったんだ。損得なんて、何も気にしていないような行動が。俺も、そんな風にまた自然に行動してしまうことはあると思う。自分らしくもない行動。それが、本当の”強さ”なのかもしれないって思うんだ。

A子:私はそう思う。”強さ”って、そういうことなんだよ。立派なことや、難しいことなんかじゃなくったって良いんだよ。

聡志:そうなのかな。そうだったら嬉しいよ。・・・そうだ、いよいよ明日だよな、歌集会。

A子:うん、そうだよ。

聡志:お前のことをいじめて来た俺が言えることじゃないのかもしれないけれど、明日、頑張れよ。俺、表に出しては応援出来ないと思うけれど、心の中では応援しているから。

A子:ありがとう!それだけで十分だよ。それじゃあ、また明日にね。(舞台からはけていく)

聡志:おう、じゃあまたな。(舞台からはける)

(舞台暗転)


【歌集会当日】

(生徒たちが並んでいる。歌集会は始まっているが、A子は直前準備をしているという設定なので、まだ舞台上にはいない。現在は歌と歌の休憩中)

隼人:あー、超だりー。どいつもこいつも、超音痴じゃん。ゴキの歌がラストかあ。

孝一:おいおい、知っているか?今回の歌集会、優勝したクラスにはトロフィーが贈られるらしいぜ。

優香子:はあ?トロフィーなんて貰っても嬉しくないし。超ダサいじゃん。

隼人:うちのクラスは期待が出来ますね。なんたって、素晴らしい人が歌を披露してくれますからね!

優香子:その『素晴らしい人』は絶対に最下位だろうけれどね。自分で推薦しておいてなんだけど、嫌になっちゃう。

孝一:まさか、自分から立候補するとは思わなかったしな。

優香子:・・・まさか、それだけ歌に自信があるってことなのかなあ。

隼人:そんなわけないって!ゴキは何も得意なものがないからこそ、ゴキブリなんだぞ。自信があったとしても、どうせ酷いに決まっているよ。

優香子:そうだと良いんだけれど。

(A子が舞台に出て来る。出番を待っているので前の方で待機するので、偶然聡志の隣になる)

隼人:(頃合を見はからって)聡志、そんな奴の隣で、可哀想になー。

孝一:キモすぎて吐かないようにしろよ。エチケット袋、用意しておこうか?

隼人:俺、隣じゃなくても吐きそうだから、隣だったら今頃とっくに吐いているよ。聡志は強いなあ。

A子:いい加減にしてよ!

隼人:はあ?

孝一:何言っているんですかー?

隼人:頭おかしいんじゃねえの、こいつ。

優香子:うるさいんですけど・・・。

孝一:ほんと、気持ちわりいな。

隼人:最近自殺している奴らみたいに、死ねば良いんだよ。

孝一:そうだよ、さっさと自殺して俺たちを楽しませてくれよ。

優香子:遺書に私の名前は書かないでね。

隼人:お前が死んだって、誰も悲しまねえんだよ、気持ち悪いゴ・キ・ブ・リ。

聡志:(耐え切れなくなったように)もう、やめろよ!

(皆、唖然としてシーンとなる)

聡志:(必死で搾り出すように)言われる方は、辛いに決まっているよな?お前たちは、言うのは好きだけど、全員、言われるのは嫌がるよな。なんで、こんなことが平気で出来るんだよ!

(皆、顔を見合わせて黙ってしまう)

司会:それでは、そろそろ休憩を終わります。次の出番の方は、舞台に出て来てください。

(A子が舞台上の舞台に行くということで、はける)

隼人:(なんとかいつもの調子を取り戻して)お前、何考えているんだよ!とうとう本格的に狂ったか?

優香子:そうだよ。大体、聡志だっていっつもゴキのこと、いじめていたじゃん。何、自分だけが良い子ぶっているのよ!

聡志:静かにしろよ、お前ら。次は、A子の歌なんだから。

サヤ:(勇気を出して、真剣な表情で)そうだよ。皆、ちゃんと聞こうよ。

優香子:キーッ!サヤまで一体、なんなのよ!

隼人:あとで覚悟しておけよ、お前。

聡志:・・・ご自由にどうぞ。

(A子、舞台上の舞台に堂々と出て来る)

司会:さて、最後は2年A組、A子さんの歌です。暖かいクラスメートに見守られる中、歌って頂きます。曲は『(まだ未決定)』です。

(A子、歌い出す。上手いというよりは、凄く感情がこめられている歌に出来れば良いと思う。隼人たちは、最初は笑ったり、野次を飛ばしたりしようとするが、おもわず黙って聞く。終わったあと、少し間があり、そのあと大きな拍手)

司会:・・・!素晴らしいですね。いや、本当に素晴らしいですよ。びっくりしました。これは、採点するまでもなく、A子さんが優勝なのではないでしょうか?

金原:(舞台上の舞台にのぼって、A子にすりよって)いやー、A子さん、とっても素晴らしかったわ!さすが、皆で推薦したかいがあったわね。あなたは我がクラスの誇りだわ。 

校長:(マイクとトロフィーを持ち、A子にゆっくり近づいて)えー、金原先生は落ち着いてください。我が校は『いじめがまったくなく、素晴らしい学校』として、地域でも評判になっています。いじめに関する悲しい報道が沢山なされる中、我が学校へ通えることの喜びを歌で表現してくれたA子さんは、文句なしの優勝です。A子さんに、トロフィーを贈りたいと思います。

A子:私、受け取れません。

校長:えっ?どうしてですか?

A子:それは、私がクラスメートからいじめを受けているからです。

(全体、ざわざわする)

校長:はは、それは面白い冗談だな。担任の金原先生、勿論、事実ではないよねえ?

金原:え、ええ、勿論。ちょっとしたジョークよね、A子さん?

A子:(校長からマイクを奪い取って)冗談なんかじゃない!この学校には、いじめがあります!それが確かな事実です。

校長:何をするんだね、君!(マイクを奪おうとするが、逆に突き飛ばされて転がっていく)


【A子の想い】

(全員、唖然としてA子の方を見ている)

私は、小学校一年生のころから、ずっとずっといじめを受けています。今のクラスでも、いじめは続いています。
昔から、どんなに普通になりたい、普通の人みたいに楽しい学校生活を送ってみたい、って願っても、それがかなうことはありませんでした。
言葉でも、暴力は暴力です。気にしないなんていうことは、とても出来ません。
『気持ち悪い』とか『死ね』とかって言って来る人たちに、そんなに私のことが嫌いなら、私のことを殺して、救って欲しいとも思っています。
私は自分では現状を変えることが出来ない”弱い”人間です。そもそも、いじめを受けるということは”弱い”ことなのでしょう。
私は、これからどこへ行ってもいじめを受けて、一生、苦しいまま死んでいくのかもしれない。
それでも、人を平気で傷つけることが”強さ”なら、私は一生”弱い”ままでも構わない。
”弱い”ことは悪いことなんかじゃない!!他人が”弱い”ことを笑える人が、一体どれだけいるのでしょうか?
私みたいな、ゴミみたいな存在だって『あなたが生まれて来てくれて良かった。あなたが大好きだよ』って人に言う権利も、人に言って貰える権利もあるんだ!!
私はいつか、今の自分を『あなたは、幸せになって良いんだよ』と、心の中で抱き締めることが出来る人間になりたい。そして、自分の子供は、絶対にいじめを受けて欲しくないし、絶対にして欲しくもない!!
いじめを受けるために生まれて来た人間なんて、この世のどこにもいないんだ!!

(全員、唖然としているが、聡志が拍手し、そこから少しずつ拍手が起こっていく。孝一や優香子たちも、いつの間にか自然に拍手をしている。最後の最後に、渋々隼人も拍手をする。教師たちも拍手をし始める)

田山:(嬉しい気持ちを隠せずに)金原先生、あなたが言う”クラスに必要のない生徒”は、最も”学校に必要な”生徒だったみたいですね?

金原:う、うーん、とんでもないわ・・・ああ、これで『いじめがあるクラスの担任』として評価が下がってしまうのね・・・。(倒れそうになりながら、舞台からはけていく)

(舞台上のいつまでもやまない拍手。舞台暗転)


【エンディング/ミキ&サヤとの会話】

(暗くして、A子とミキのみにスポット当て)

ミキ:A子、さっきは凄く素敵だったよ!私、A子のことを何も分かっていなかった。ごめんね、ごめんね・・・。

A子:そんな、私、ミキにはとても感謝しているんだよ。これまで学校に通い続けることが出来たのは、ミキのおかげだし。これからは、無理をして私のことを気遣ったりしなくて、良いんだからね。ミキの行動じゃなくて、ミキの気持ちが、私のことを支えてくれているんだから。

ミキ:私、正直に言って、A子のことを『”弱い”人のことは支えなきゃ』っていう気持ちばかりで接していた。だけど、そういうことじゃなく、これからは、良いところばかりではない人だからこそ、そんなA子と仲良くなっていきたいなって思うよ。

A子:ありがとう!!凄く嬉しい。そういえば、いつもはこのあたりで金原先生に呼び出されるんだけれど、嬉しいことに来ないなあ。

ミキ:金原先生、A子のスピーチに驚きすぎて気絶しちゃって、保健室で休んでいるみたいだよ。今、他の先生たちは緊急会議を開いているみたい。それだけ、A子の発言が先生たちにも影響したんだね。

A子:そうなんだ・・・。でも、これが解決じゃなくて、ここからが始まりなんだろうね。私、頑張らないと。

ミキ:嫌だな『頑張らなくたって良いんだ』って言っていたのは、A子じゃない。

A子:あはは、そうだったね。

(サヤが気まずそうに舞台に出て来る。スポット当て)

サヤ:・・・今まで本当にごめんね。謝って許されることなのかどうかは分からないけれど、謝らせて欲しいんだ。

A子:あ、サヤさん。

サヤ:私、今までずっと人に合わせてばかりいた。友達を失うことが怖いから、いじめが嫌でも、優香子に従ってばかりで。・・・でも、そんなことは言い訳で、いじめをすることが楽しかったの。誰かを集団で攻撃することは、ストレス解消になったし、理屈抜きで面白いことだった。でも、いじめられている側が、どれだけ苦しんでいるのか、それを考えたら、自分のことが許せなくなった。最低だよ、私・・・。

A子:どうしよう、そこまで謝られると、どう反応すれば良いのか分からないよ。

ミキ:今、A子がサヤに一番伝えたいことを、そのまま伝えれば良いんじゃないかな?

A子:・・・えーっと、サヤさん、私はサヤさんのことをすぐに信頼することは出来ません。今の謝罪の言葉だって、嘘かもしれないし、またいじめを受けるのかもしれないと思うと、怖いです。だけど、それでも、私はサヤさんと仲良くしたいなとも思います。サヤさんが良ければ、これからは色々と話したりしませんか?

サヤ:もちろん、これからよろしくね。まだ、優香子とかの前だと話せないかもしれないけれど。”弱く”てごめんね。

A子:”強い”ってアピールしていたサヤさんより、私は今のサヤさんの方が話しやすいですよ。自然で素敵です。

サヤ:ありがとう!同い年なんだから、タメ語にしようよ。

A子:はい、そうさせて頂きます。あっ。

ミキ:あはは、また使っているね。

A子:サヤさんも、ぜひ私のことは下の名前で呼んでくださいね。”ゴキ”じゃなくて”A子”っていう名前があるんです。

サヤ:・・・うん、A子。改めて、よろしくね。

ミキ:よーし、A子のおかげで早めに学校が終わったことだし、早速これから三人でマックでも行こうか!?

サヤ:私、おごっちゃうよ。

A子:(とても嬉しそうに)やったー!!・・・あ、でもその前に、話したいことがある相手がいたんだった。

ミキ:え?誰だろう。

サヤ:そうなんだ、行ってらっしゃい。二人でマックで待っているよ。

A子:ありがとう。またあとでね!(舞台から走ってはける)

ミキ:じゃ、行こうか!

サヤ:うん!

(舞台暗転)


【エンディング/優香子&孝一の会話】

(優香子、怒りながら舞台に出て来る。孝一がその後ろからついて来る。スポット当て)

優香子:何よもう、A子のくせに生意気なんだから!私の方がよっぽど上手に歌えるわよ。大体、あんな偉そうなスピーチして。ほんっと信じられない。

孝一:・・・でもさ、俺たち、今までA子に対して本当に酷いことをしていたのかもしれない。

優香子:えっ?

孝一:俺、思い出したんだ。A子とは同じ小学校だし、昔は、かわいそうな奴だなって思って、色々と気を遣って優しくしていた。だけど、好きでもない奴に『気を遣う』っていうことが負担でしょうがなくて、苛立ってばかりで。いつの間にか、A子に対して酷いことをするようになっていたんだ。

優香子:それがどうしたのよ。今更そんなこと言っても、しょうがないじゃない。

孝一:そういう行動がいじめで、本当に人の心を傷つけるものだっていうことを、今の今まで自覚していなかった。『こいつはどうでも良い存在なんだから、どんな風に扱っても良いんだ』って、思い込んでいたんだ。そんなわけ、ないんだよ。A子も、俺たちと同じ、普通の人間なんだよ。

優香子:・・・。

孝一:覚えてないか?優香子だって小学校のころ、A子と仲良くなりたいって、張り切っていたこともあったじゃないか。それが、どうしてこんなことになっちゃったんだろうな。

優香子:・・・私、もう一度、A子と普通に話してみようかな。

孝一:うん、そうしてみようよ。仲良くなれるかどうかは分からない。だけど、関わってみないと分からないことって、沢山あるんじゃないかな。

優香子:うん!(聞き耳を立てていた感じで、隼人が舞台に出て来る)あっ、隼人・・・。

隼人:お前たち、覚えておけよ!畜生!!俺は絶対、ゴキをいじめ続けるからな!!(舞台からはける)

孝一:・・・俺たち、あいつを確実に敵に回したみたいだな。

優香子:はあ、どうしよう。隼人を敵に回してまで、A子へのいじめをやめる意味、あるのかなあ。

孝一:『ゴキ』って呼ばないで、ちゃんと名前で呼ぶようになっている時点で、俺たちの答えは決まっているんじゃないかな?

優香子:・・・そうかもしれないね。これからも”弱い”自分たちで頑張っていこうよ。

隼人:そうだな!(力強く手でタッチし合う)

(舞台暗転)


【エンディング/聡志との会話】

(聡志、舞台真ん中でぼんやりと立っている)

A子:(舞台横から走って来て)聡志君ー!!さっきはかばってくれてありがとう。おかげで、あんなに色々なことを言うことが出来たのかもしれない。(手を差し出す)

聡志:あ、ああ。(照れくさそうに握手する)

A子:私の手に触れても『気持ち悪い』って言わないんだね。

聡志:・・・だってお前は、気持ち悪くなんてないから。もう”弱い”人なんかじゃない。本当の意味で”強い”人だよ。

A子:ありがとう。だけど私は”弱い”自分のままで良いんだ。

聡志:え?

A子:私は”弱い”ことも含めて、それが自分。A子なんだよ。私は、そう認められる自分を、これからは少しでも好きになっていきたいんだ。

聡志:・・・うん!きっとお前なら、沢山の人の生きる希望になれるよ。俺、これからもずっとずっと応援しているから。(聡志から手を差し伸べて)

A子:(強く握手し返す)・・・ありがとう!

A子:(録音)これからも、いじめは続いていくだろう。いじめは、簡単になくなるものではない。人間の”弱さ”がいじめを求めているのかもしれないから。けれど、そうだとしても、私は生き続けていきたいと思う。一人の、素敵な人間として・・・。
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編集 / 2012.06.06 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
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無事に退院することが出来ました。ありがとうございます^^
新しいブログもよろしくお願い致します。
6月27日
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