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ショートショート 【白い杖】
カテゴリ: 【ショートショート】 / テーマ: ショートショート / ジャンル: 小説・文学
とある中小企業にて、毎日のように怒鳴られている青年がいた。

青年は大学生。遊びのための金を貸せぐために、アルバイトに来ていたのだった。
ミスが多いというわけではないのだが、青年には仕事に対する真剣さが足りないので、その会社の正社員のうちの一人が、厳しく接してくるのだった。

『ウザってぇ・・・』
青年はそう思いながらも、時給が良いので、辞めずになんとなく働き続けていた。

青年が働くようになってからしばらくたったある日、その正社員の様子がどうもおかしくなってきていた。
誰から見ても、もたもたした動きで、今までとは明らかに違う様子だった。
青年は不思議に思い、少し観察してみると、どうやらその正社員の目が悪くなってしまっているということに気がついた。

青年はおもわず「コイツ、目が見えねぇでやんの!!」と叫んだ。
それは、普段の憂さ晴らしでもあったし、咄嗟に出た暴言でもあった。

正社員は、それを黙って聞き、その場をあとにした。
しまった、とも思ったが、今まで言われてきた言葉を考えればと、青年は勝手に納得した。

青年は、大学を卒業して、バイトをしていた会社の正社員になることができた。
特別にやりたいこともなかったので、就職難の時代、ありがたい話でもあった。

それから更に数年の月日が流れ、青年は、すっかりちゃんとした社会人になっていた。
いつも通りの通勤途中、白い杖をついた老人が、数人の少年たちにからまれていた。
どうも、老人がゆっくりと歩く度に、少年たちが、老人の白い杖を蹴り飛ばしているようだった。

青年、いや、もう立派な社会人は、少年たちを注意しようとしたが、ひるんでしまってできなかった。
そのうち、少年たちは、老人をからかうことに飽きたのか、どこかへ去って行った。

「大丈夫ですか」社会人は、老人に後ろから声をかけた。
「ええ、良くあることですから、大丈夫です・・・」そう言って振り向いたのは、あの厳しい正社員だった。

仕事に燃えていた彼の面影はなく、酷く老けて、みずぼらしい格好をしていた。
社会人は、驚きのあまり声が出なかった。

「あなたはとても優しい人ですね。声を聞くだけで分かります。本当に、ありがとう」
そう言って、かつて社会人の上司だった老人は去っていった。

社会人は、なぜか自分の頬をつたう涙を、止めることができなかった。



【あとがき】

亡き父親が死ぬ数年前から病気で目を悪くし、こういった体験をしていたので、そこから思いついて書いた話です。
バイトの青年に吐かれた暴言などはそのままです。そして、実際にその相手は立派な社会人になったんだとか。
(「よっ!久しぶり!」とスーツ姿で気さくに声をかけてきたそうです;)

その話を父親から聞いた当時はあまりにも腹が立ち、その青年を殴りつけたくなったものですが、今となっては、そんなことを平気で発言出来る彼の性格を不憫に感じます。
今、彼がどうしているのかはもちろん分かりませんが、願わくば、この話のように、人のために涙を流せるような人になっていてほしいものです。

・・・と、上から目線で言ってみる。
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編集 / 2012.06.01 / コメント: - / トラックバック: - / PageTop↑
お知らせ
無事に退院することが出来ました。ありがとうございます^^
新しいブログもよろしくお願い致します。
6月27日
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